Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
出口
2022-12-10 17:05:21
9626文字
Public
原作軸(五悠)
「28歳男性教諭、13年下男子に許されたい」
ご→→→ゆで悠仁のこと大好きな先生がもだもだしてるだけの五悠。
tetra toxic
やっちゃった
……
よなぁ~。
思い返すまでも無く、やらかしたのは分かってた。分かり切ってた。
今朝顔を合わせた時、悠仁もめちゃくちゃ意識してたの分かったし。冗談とかノリで
――
とか誤魔化すタイミングも失してしまった。
昨日は疲れていて。とても疲れていて。
とりあえず早急に癒しか休息が欲しかった。
報告と相談のために訪れた学長室を出たのは、23時過ぎ。僕の足はそのまま自室へと向かう
――
……
途中で、角を曲がってた。
高専内の寮にある僕の部屋は、玄関を入り談話室から学生寮へ向かうのとは対角にある廊下を行った先にある。一応、共有スペースを挟んで学生寮とは別棟。歩くたびにギシギシ言う渡り廊下は曲がり坂に上がっている。
そのとき、談話室で見つけた忘れ物。見覚えのあるそれは悠仁のタオルだと気づいて、仕方ないなと届けてやることに決めた足はいつもと違う廊下を歩いた。
消灯時間を過ぎた廊下は暗かったが、僕の目にはさして問題もなく。この時間に悠仁がまだ起きているかは日によって違っただろうけど、寝ているならドアノブにでも掛けておけば良いだろうと思って。
けれど室内から漏れる明かりに、ドアノブを回してた。
「こぉらあ~~悠仁! いつまで起きてんの、もう寝な?」
いつだって鍵もかけずにいる悠仁も、ノック無しにドアを開ける僕も毎度のことで。悠仁はびっくりしたような可愛い目で僕を見返すと、
「五条先生! おかえり! お疲れさんッ!」
ずかずかと上がり込んだ僕に、ベッドの上で胡座をかいたままハイタッチの手を上げた。
僕は笑いつつ片手でパンパンッと両方の手のひらタップしてやると、もう片方の手に持っていたタオルを差し出しながら「ただいま」を言う。ちょっとニヤけちゃった
……
って自覚しながらも、この生徒は可愛すぎるから仕方ない。
悠仁は「あっ!」て気づきながら「ありがと!」って言ってタオルを受け取ると、許可も求めず隣に座る僕を視線で追う。
視点が近づき顔が近づき、けれど躊躇も警戒もされないのが心地よい。悠仁はいつもそうだ。
それから僕は悠仁の部屋で30分ほど過ごした。
癒しを求めていた僕に悠仁の声は心地よく。しかしさすがに深夜帯に差し掛かろうという時刻だから、抑え気味な声は恵に配慮してだろう。
その元気さ故にどこか大雑把な印象を与える悠仁だけど、こういった人との距離感の計り方は上手い。多分これは意図しているものではなく、悠仁の持って生まれた気質と、成長との過程で身につけられた無作為な経験則から来ているものだと思う。
それでも基本は人懐っこい。あの、なかなか人を寄せ付けようとしない所のある恵ですら絆しているのだから、それはすごい。
僕なんて恵と出会った当初は、小学低学年生とは思われないようなほど辛辣に不審者を見るような目で対応された。まあ、あの時は僕の方も初見で恵をクソガキ判定してたし、お互い様だったって思うけど。
悠仁がアクビをして、それでやっと僕は部屋を辞することにした。
というか、まだ一度も自室に戻っていなく、寝支度までの行程を何も終えていないことを思い出した。
悠仁が時計の方へ振り返って、日付の変わっていたことに驚いて、再び僕の方へ振り向いたとき
――
思いがけず視線がぶつかった。
僕はアイマスクをしたままだったし、悠仁が臆せず僕のほう真っ直ぐに見て話すのはいつものことだったけど、その時は確かに視線がぶつかったと思った。なんて言うんだろう? ぶつかって、引っかかった感じ。絡んだ
――
って言うのかも知れない。
一瞬だけど、悠仁がたじろいだのも分かったし、アクビで涙ぐんだ目がゆらゆらと不思議な艶を滲ませたのも見た。
それに惹き寄せられるよう近づいた僕はやはり疲れていたようで、思わず逃げるよう身を引いたらしい悠仁が胡座のままだったのにバランスを崩し転がってしまうのを、更に追いかけていた。
片腕をベッドの上について、もう片手は悠仁の肩を沈めるよう強く押していた。
なんか
――
押し倒したみたいだって意識したのは、そのまま見上げてくる悠仁が固まってるのに気付いたのと、思わず唾を飲み込む喉が震えたの自覚したから。
あ
――
ヤバ
……
って我にかえり、出来るだけ焦りを面に出さぬようそおっと手を離し身を引いた。
悠仁もすぐに起き上がって来たけど、何も言わずに僕のこと見上げてくる。
気まずい空気が流れてるのと、悠仁も戸惑ってるの気づいてたけど、下手にフォローしたらますます変な空気になってしまうって分かってたから言葉も見つからなくて。
結局僕は、そのまま逃げた。
五条先生の顔をして、
「おやすみ、悠仁」
って優しい素振りで言って、部屋を出る直前でやっと、
「おやすみ、五条先生」
遅れて声が聞こえたの、振り向くことも出来ずにドアを閉めた。
あれ以上悠仁と同じ部屋の空気吸ってたらヤバかった、って思った。
大抵の場合、コイツとこれ以上同じ部屋の空気吸えねえ
……
なんて思う時は、怒りなどの感情から苛立っている時だけど、悠仁とのそれは違った。
これ以上同じ部屋の空気を吸っていたら、理性の崩壊秒読みだって焦ったから。
つまり僕は、自分の生徒である虎杖悠仁のことを『そういう目』で見ているのだった。
そうして翌朝、
「寝た気しね~
……
」
ボヤきながら起き出して、今日の午前中はオフだったけど二度寝できずにスウェットのままの緩いカッコで談話室へ向かったら、悠仁と鉢合わせ、そして明らかに意識するよう、
「おはよ、先生」
って言われたかと思ったら、サングラス越しの視線から思いっきり目を逸らされた。
僕はそれが割とショックで、棒立ちになってた隙に踵を返され、
「悟、邪魔!」
早朝ランニングから帰ってきた真希に、
「人一倍デカいナリで、部屋の真ん中突っ立ってんな!」
と蹴られるまで、言葉通り突っ立っていた。正確に言うとその蹴りは当たってなかったけど。
悠仁に嫌われた!?
――
って、柄にもなくビクついて。邪すぎる想いに気づかれた可能性を考える。
呪力で威圧した訳でもなく、飢えた視線を直接見られた訳でもない。糜爛したような思考や脳内を赤裸々に覗かれた訳でもない。
それでも悠仁は、何かを
――
感じ取ったのかも知れない。本能的な危機回避の衝動とか。生理的な嫌悪とか。
嫌悪
――
されてたらヤダなあ
……
。悠仁に「生理的に無理、受け付けない」なんて言われたら、一生立ち直れない。GLGを自認する僕には、そんな言葉は女の子にだって言われたことない! ましてや悠仁に言われたりしたら
――
無理無理無理!! ショックで軽く死ねる自信はある!!
想像だけで恐ろしくて、僕はそれ以上悠仁と出くわしたりしないように急いで自室へ逃げ帰った。
その日は久々のオフになりそうな予感だったんだけど
――
案の定午後から任務が入った。いつものこと。
逃げたくせに高専出て数時間後には悠仁に会いたくなって、顔見たくなって、声が聞きたいって思って。分かってはいたけど重症だな
……
って苦笑いが出た。
まさか生徒に手は出せないけど、成人したら良いだろうか? とか、卒業したら良いだろうか? とか、許される道を探してる。必死だな、僕。
誰かを手に入れたくてこんなに本気になること、はじめての経験で。それこそ今までの経験なんて全く何の役にも立たなかった。
これが恋ってやつか
――
と浮かべ、果たしてこの恋に、許される日は来るのだろうか? なんてポエミーな自分に、無性に恥ずかしくなったのを覚えてる。
けれど、誰よりも悠仁に許されたい。13も年下の男の子に情緒を乱されて、これ以上近づくことも離れることも出来ない。
そのジレンマに、僕は尚さら惹きつけられているのかも知れない。
僕の感情が漏れこぼれてしまったせいで気まずくなってしまったけれど、それだって蓋をしてこれ以上あふれないようにしておけば平気だ。
オトコ同士でこの年齢差で、悠仁の恋愛対象として意識されようってのが土台無理な話なのだから。
21時、僕にしては早い帰り時間。
遠くで雷鳴が轟いているのが聞こえていたが、山肌近いこの土地では良くあることだったので気にも留めていなかった。
まだ雨は降って来ないが、そのうち降るだろう匂いがする。
学長への報告を終えて、寮へ戻る。消灯時間はまだだけど、門限過ぎたこの時間の玄関は施錠されているのでポケットの鍵に手を伸ばしかけた時
――
フッと目の前が陰った。
突然の異変に、思わず辺りの気配を窺ってしまうのは長年の習性。けれど特別な害意などは無さそうで、すぐに警戒を解きただの停電か
……
と安堵する。
そうでなくても、天元様の結界に守られたこの敷地では強襲など滅多に受ける心配はないのだけれど。
呪術高専は山の中なので、明かりがなくては真っ暗になる。そのうえ今夜は新月で、一寸先すら見えなくなるような状況だ。
だけど僕の六眼なら、目を凝らすまでもなく物の形を捉える。僕にとっては道の端で、軽くつんのめりかけたくらいのアクシデント。
余りにも良く見えるものだから部屋の明かりも点けずにいたら、辛気臭いとか不気味だとか口さがなく言われたことを思い出した。
「エコだろ?」
って返したら、
「君は人並みの生活を覚えた方が良い」
と言われたな。
「悠仁どうしてるかな?」
つい口をついたのは、油断していたのかも知れない。幸い近くに誰もいなかったから聞かれることは無かったけど、口にしたら会いたくなった。いや、ずっと会いたかったのだから、ますます会いたくなった。
悠仁はビビりじゃないし、停電くらいで動揺もしないだろう。むしろ暗くなってやること無くなったからって、早々に眠りにつくくらいだろう。
今では誰もがいつでも手の届く範囲にスマホを置いているだろうし、簡易的な明かりを手にすることも難しくはない。
スマホの明かりで寝支度をして、さっさとベッドで丸くなる途中なのかも知れない。
明日は会えるかな? なんていじましい気持ちを引きずりつつ、再びポケットに手を伸ばしかけた僕は、ジャケットの反対側のポケットで震え出したスマホに気づいた。
取り出し液晶を覗くと『虎杖悠仁』からの通話着信。
「!?」
思わずビクッと震えたのは自分でも情けなかったが、切れないうちに慌てて受信ボタンを押した。
「先生!? ねえ!! 停電!! いま高専で停電起きてるんだけど!!」
いつも通り過ぎる悠仁の、困惑したようではあるけど元気な声で思わず笑ってしまう。
「落ち着いて、悠仁。僕もいま寮の玄関に着いたとこ。真っ暗だね~」
停電くらいで動揺するなんて悠仁らしくないと思ったけど、緩やかな口調でなだめると、
「いやっ! 俺いま地下室に居て、本当に真っ暗なんだよね!!」
「えっ?」
地下室って、あの地下室? 僕と悠仁が修行の日々を過ごしたあの地下室!? 他にないよね?
「寮抜け出してごめんなさいッ! ここでDVD観てたら急に暗くなっちゃって
……
伏黒にメッセ送ったら『いつ復旧するか分からないから寝ろ』って返事来たから寮もか~って思って! でもDVD観てたし、復旧したあと電気付けっぱなになるのまずいかな? って思ったんだけど、ブレーカーの場所とか分かんねーし! 先生助けて~!」
悠仁の言葉を聞きながら、僕の足は既に彼の元へと向かってる。いつ息継ぎしてるんだろ? って勢いで悠仁の声が弾ける耳元はくすぐったくて、露骨に口角が上がる。
暗闇でニヤけていては、さすがに「不気味だ」と言われても釈明出来ないが仕方ないだろ? 僕の悠仁が「先生助けて」って言ってる!
あの地下室のこと、僕しか分からないだろうから僕にしか助けを求められないのは分かってた。
だけどどこでも寝られる悠仁が、「ま、いっか」ってそのままソファでふて寝しなかったことだけでも褒めてやりたい。
急に降り出した雨は無限の向こうに弾いて、僕は悠仁の元へと走った。
近道を行こうと、路地のようになった区画から身体を放り出すよう跳んで上階の渡り廊下へと上がり、地下室の入り口までは滑るよう駆け寄った。
廊下にしゃがみ込み、ふぅとひと息ついて、呼吸は乱れてないよな? 髪も
――
わずかに湿気を察しているようだが乱れてはいないはず。非常事態に助けを求めた子を待たせて呑気なこと考えてるな? と自分でも思うけど、これ以上みっともないとこ見せたくない男心はしょーがないじゃん。
髪も呼吸も乱れてないけど、正直心拍はヤバかった。嬉しさと気まずさと緊張とごちゃごちゃのぐちゃぐちゃになってるのに、それでも悠仁に会える嬉しさが何にも勝る。
出来るだけそおっと扉を開き、開け放して階段を降りて行く。アイマスク越しでも階段を降りることに遜色はない。足音に悠仁も気づいたはずだ。
「五条先生!?」
ソファの上で振り向いた悠仁は、手にしたスマホから照らされる明かりでその表情まではっきりと分かった。
不安そうでは無かったし怖がってもいなかったけど、弱ったって感じの情けない顔から安堵したのが分かりやすい。
「わー! 良かった!!」
悠仁は不用意にソファの上から動かなかったけど、両手を上げて僕を大歓迎する。
僕はソファの元まで歩み寄り、背もたれ越しに悠仁のこと見下ろした。
「先生、おつかれ!! 帰って来て早々に呼び出してごめん」
悠仁は言いながら、笑ってた。こんな暗闇でも悠仁の笑顔は何よりも眩しい。
「平気だよ、早く戻れて良かった。今すごい雨降って来たよ」
だから微笑みを返しながら答えてやると、「えっ!? 雨!?」ってまた弱ってた。
僕はソファの背もたれを跨いで、悠仁の隣に腰を下ろす。
「先生、ブレーカーは?」
聞かれて、
「あ、そうだった! 僕の目には問題なく見えるから忘れてた」
ついうっかりした僕に、
「先生、何しに来たの~? つーか、本当凄いね先生のその目」
悠仁は脱力しながらも笑って、僕のこと見上げてくる。暗くて距離感を見誤ったのか随分と近い。ドキッとしたのは僕のだけじゃ無かったようで、悠仁もそっと距離を空ける。
悠仁の肩を抱き寄せたかったけど、そうにもいかないからソファの背もたれの上に置いた手を持て余す。あと少しで触れられそうなのに、その手に特別な意味を持たせてしまった僕は悠仁に触れられない。
だけど視界の隅、下の方でモゾモゾと動く悠仁の手に気づき見下ろす。僕の視線に気づいたのか、ぴたりと止まった手と、見上げてくる瞳。
あ~~
……
かわいい
……
♡ なんて、アイマスクの奥から不埒な視線を送る僕に気づかないのだろう悠仁が、真っ直ぐに僕を見つめてくる。どの程度見えてるのだろうか?
僕の目が僕以外の人間と違う見え方をしているのだろうことはわかっても、僕にその差異の細かいところまでは分からない。彼らが僕の視界を理解できないように、僕にも本当のところは分からないんだ。
察することは出来る。テレビや映画などの媒体に映し出される映像が彼らの視界に限りなく近いものならば、僕はそうして過剰な情報を排除したシンプルな視界だって疑似体験できる。
だけど、悠仁の目に僕がどう映っているのか? どんな男に見え、どこまで知られているのか? その本当のところまでは分からない。
今この薄暗い部屋で、僕の顔色は察せられるのだろうか? 体温の上昇は? 微量の発汗は? 瞳孔の拡大は?
考えるほど固まってしまう思考と、ぎこちなくなる表情。なんでそんなに見るの? って戸惑いと、触れたくてたまらない温もり。
「悠仁」
口にした名前に、ぴくりと反応が返る。
その瞬間、悠仁の手にしていたスマホの液晶のバックライトが消え、視界が暗く陰った。僕には光源が途切れたと気づく程度だけれど、悠仁の視界は真っ暗になっただろう。
ふたたびバックライトを灯そうと動きかけた悠仁より早く、僕の手のひらが液晶を覆う。少し光が漏れたけど、手のひらの下。
戸惑うような表情を見せた悠仁の目が、そっと細められた。スマホ越しに重なった手をそのまま握って、迷いなく真っ直ぐに
――
悠仁の唇に重なってく。いくら暗くても近過ぎる距離感には気づいただろうに、悠仁は逃げずに最後まで僕を見上げている。
唇を重ねた瞬間から、僕は何もかも忘れるようにして悠仁を抱きしめていた。
押し隠して何も無かったような顔をすることを失敗したあの時から、きっと僕は悠仁のこと諦めることを諦めていた。手放すどころか貪欲に、全てを僕のものにしたい。今だけでなく過去も未来も、何から何まで隅々と、僕を行き渡らせ僕を感じるようになってくれたなら。
唇は数秒で離れ、悠仁の額がゴツンとぶつかるよう僕の胸へと押しつけられた。悠仁の表情は見えなくなってしまったけど、悠仁の髪から悠仁の匂いがする。たまらない。
逃げられないってことは、そーいうこと? 許されたってこと? それとも暗くて不用意に動けないだけ?
ここに来てまだ躊躇う僕の身体に、悠仁の腕が巻き付いた。いや
――
抱きついてきたその腕に僕も彼を強く抱きしめる。
悠仁が少し笑ってる? 僕なんてとてもじゃないけど笑ってられない状況なのに、悠仁はくすぐったそうに笑って、ぐりぐりとすり寄せるよう僕に額を押し付けた。
暗い部屋、ドクドクとうるさい鼓動と熱を帯びる身体。悠仁のそれも同じだろうか? と肩から腕へと指を這わせて、がっしりと掴みながらその顔を覗き込んだ。
「せ、んせぇ」
小さな声に誘われて、またキスを交わす。興奮に、吐息さえ漏れそうなほど胸が詰まった。
そのまま悠仁の身体をソファへ横たえる。沈めるよう組み敷いた身体。開かせた足の間から這い寄って重なり合い、促した口へ舌を突っ込むキスをした。
悠仁は何度か身震いしたし、僕の服を掴んでは押し戻そうという仕草もしたけれど、本気で押し除けようという抵抗までは見せなかった。ただその身体から発せられる仕草には、躊躇いを感じる。
躊躇があるなら、もうちょっと本気で抵抗した方がいい。僕だって無理矢理にどうこうするつもりはないけれど、嫌がられなければ止まることできなくなる。悠仁のせいにするのはどうかと思うけど、僕にだって余裕はない。
あ
――
悠仁、勃ってる? って気づいて、ブワリと込み上げた熱には頭のなか真っ赤になった。
悠仁の身体が、欲望が、僕に反応しているという事実は僕の理性を簡単に突き崩してく。
激しくなるキスに悠仁は何か察したのか、僕の腕の中で身を捩った。ダメ、もっと抵抗しなくちゃ。
――
ハァ、抵抗されるのも燃えンな。たまんねぇ。
「せ
――
せぇ、ッ
……
」
息も絶え絶えって感じで離れた唇が大きく息を吸ったあと、悠仁の濡れた唇が艶を滲ませ僕を呼んだ。
興奮しすぎていた僕はその瞬間に気づかなかったけれど、一拍遅れてソレに気づく。悠仁の唇の艶を知覚させた視界は、いつの間にか明るさを取り戻していた。
2人してハッと正気にかえるよう、明るい照明の下で気まずく見つめ合ったのはほんの3秒ほど。
僕は慌てて起き上がり、乱れかけていた悠仁の服を正してやった。
ヤバい
――
いきなり襲いそうになってた!
というか、もうほとんど襲ってた!
とんでもなく気まずいのは、悠仁に僕の気持ち気づかれたからではなくて、拒絶されないのを良いことに即手を出したのはどう思われたんだろう? っていうことの方。
「大人のキス
……
」
悠仁の声に、僕は無かったことにされない事実の方に震える。そして振り向き悠仁を見下ろすと、
「五条先生と大人のキスしちゃった」
照れくさそうに言う悠仁の頬が、いや耳まで赤くて、その愛おしさに崩れ落ちそうになる。
「い、嫌じゃなかった?」
「気持ち良かった」
「ダメ、気持ち良いとか言っちゃダメ
……
」
「そーなの?」
余りにも無邪気で、それでいて無防備に感じる悠仁の表情に、僕は一度取り戻したと思った正気をまた放り出しそうになる、が、それはグッと耐える。
「へへっ♡ 先生とチューしちゃった」
だけど悠仁は僕の気も知らずに、隣に座ってもたれかかり僕の腕に擦り寄って来る。
「僕の恋人が可愛いんだよね」
僕の腕に擦り寄る悠仁を見下ろしながら惚気るように言ってみると、
「先生
……
恋人いるの?」
悠仁はこちらを見ずに尋ねたけど、腕は離さずしがみついてた。可愛い。
「いま隣にいる」
だから傍にある頭に顔を埋めて答えたら、くすぐったそうに僕を見上げた悠仁が、
「恋人なの?」
上気した頬を面映く歪めて尋ねるのに、
「そう」
僕も表情筋ゆるゆるンなっちゃう。
「俺、可愛いってタイプじゃねーんだけど?」
自覚のない悠仁に、
「めちゃくちゃ可愛いし、今も可愛いことして来るからたまんない」
その自覚を促すと、きょとんとした顔してたから額に軽くキスをした。
「いつから恋人だったん?」
キスされた額を抑えて、悠仁が尋ねる。
「つい今さっきから」
当然のように答える僕は、悠仁の手に指を絡めて握った。
「そうなの?」
「そうなの」
「そっか~」
ちょっとぼんやり尋ねて来たけど、答えてやると簡単に納得するの、単純というか素直というか、とにかく可愛い。
「先生は
……
その、」
だけど少し躊躇うように言葉を濁した悠仁を、
「なーに?」
僕は軽い口調で促した。
「恋人と
……
居るとえっちな気分になる?」
キスで勃起しちゃうような思春期の男子らしく、どこか期待するような質問は、
「なるに決まってんでしょ?」
余裕のない僕の食い気味な返答にかき消された。
「そ、そーなの?」
圧されて尋ねる悠仁には、やはり自覚が足りない。
「そーなの! だから軽はずみにそー言うこと言っちゃダメだよ?」
ちょっと強めに言ったら、
「軽はずみじゃ
……
ねーけど、分かった」
素直にうなずいたけど、ちょっと待ってよ
……
軽はずみじゃ無けりゃなんなの? 良いの? 本気で良いの?
嫌がられたり怖がられなかったのには安堵したけれど、僕はまだ大人らしく我慢すべきだと思う。
少なくとも出来るうちはしなくては。
「悠仁、好きだよ」
だから穏やかに告白した胸の内を、
「ん! うん!
……
ふへへ」
嬉しそうにはに噛まれたら、とんでもなく甘酸っぱいものが胸に満ちた。
「いや、そこは『俺も』とか言ってくれないの?」
それでも僕はさらに言葉までねだる。誰かの気持ちを言葉にして欲しいなんてこと、初めて思った。
「あ、ごめん、先生の言葉噛み締めてたら遅れた!」
悠仁は弾かれるよう顔を上げ、潤んだ目で僕を見上げてくる。僕の鼓動はまた一段高くなり、不正脈と胸の奥から膨れ上がる高揚に破裂しそう。
「噛み締めてたの?」
「うん
……
先生、俺もしゅき♡
――
あ、噛んだ!! 」
「
――
……
ッ!」
一瞬、意識がトんだか? と思うような破壊力を持ったあどけない声に、
「めっちゃ恥ずい!!」
今度こそ顔を真っ赤にして慌てる悠仁がたまんなくて、先生の限界は近いです。
「悠仁の『しゅき♡』めっちゃ可愛い♡」
揶揄うでもなく真剣に言う僕に、
「忘れて!! リテイク!!」
慌てた悠仁が涙目なの、さらにたまんない。
もちろんリテイク分も聞きたかったけど、
「噛み締めてるので!!」
だが忘れるのは断る! という意思を込め叫んだ僕に、
「噛み締めんで~~!!」
僕に追い縋るよう抱きついて来た悠仁の腕を剥がして、強く握り、唇を合わせるだけのキスをした。
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内