出口
2022-10-06 22:48:17
8772文字
Public 呪専パロ(五悠)
 

「セフレの恋人」

セフレな呪専ごゆと巻き込まれる傑の話です。
※セフレの話とか言いつつエロはないです。
※悠仁と傑の会話メインで悟の出番あまりないです。
※五モブ♀表現あり。

続き?というか、悟サイドの話→「HONEY PHASEな恋人」 https://privatter.me/page/67bad0436c717

tetra toxic

五条先輩とセフレになって、5ヶ月が過ぎた。
あれはまだ暑い夏盛りだったけど、今年ももう終わろうとしている。
俺と先輩はセックスをするような仲になっても普段は普通の先輩後輩で、ヤるのは月に一度か二度程度。近くにいるからってそう頻繁にヤリまくってるとかじゃない。だけど5ヶ月ってことは、こないだとうとうヤッた回数が二桁に届いたってこと。

五条先輩は元々ノンケ……って言うの? 性的にはストレートに女性しか愛さないタイプだったんだけど、なぜか俺とこうなってた。いつだって彼女はいたし、今もいるみたい。それって浮気じゃねーの? って思ってるんだけど、俺は黙ってる。
俺の方もずっと女の子にしか興味ないと思ってたんだけど、ヤッてみたらこれも悪くないってなってしまったからバイなのかも知れない。でも女の子とはヤッたことない童貞だから本当のところは分からない。
他の男ともヤッてみたいか? って言ったら、今はそんな風に思えない理由があるからそれも分からない。先輩にフラれたら他の人ともシてみようか? なんて思ったりするのかな? どうだろ?

そう、俺は五条先輩に惚れてしまっていて、他の男とヤリたいと思えない理由ってのもそれだった。
もちろんこれは五条先輩には秘密にしている。だって先輩は身体だけのつもりなのに、気持ち乗せられたら重いと思うだろうし、それどころかウザがられるかも知れない。そしたら俺は確実にフラれる。
元より叶うはずのない想いならフラれること自体はともかくとして、フラれて先輩とセックス出来なくなるのは嫌だ。先輩には他にも女の人とか、もしかしたら男の人だっているのかも知れないけど、俺には先輩しかいない。心も身体も先輩だけだ。

そもそも俺はこの呪術界において処刑対象となっていて、悲しいことに誰ともセックスなんて経験しないまま死ぬはずの運命だった。俺の命は五条先輩に拾ってもらったようなもの。呪術界の上層部とか言われる人たちを上手く言いくるめるようにして俺の死刑延期を取り付けたのは、五条家の若き当主であるところの五条悟その人だった。
だから俺は、基本的には五条家預かりの身となった。普段は呪術高専の学生寮に住まう先輩の側に居るため、高専で寝起きして高専生として授業を受け、任務にも勤しんでいる。五条先輩が高専に不在の時は、高専預かりとして夜蛾先生や補助監督の管理下で指導されている。
あと時々先輩が家の仕事で五条家に一週間ほど滞在することがある時は、俺もそれについて行くからその時は五条の屋敷で厄介になる。みたいな感じ。
そんな風に後輩として、監視対象として一緒に過ごすようになって。だけど先輩と俺とはとても気が合ったから、割りかし仲良しだった。五条先輩の親友の夏油先輩ほどではないと思うけど。



俺と五条先輩がセックスするようになったのは、そうして一緒に居るようになってから程なくして……って感じだったと思う。俺が宿儺の指を呑んで高専に来たのは6月。俺と先輩が初めてセックスしたのは7月の終わり。実質ひと月半くらい。これって付き合ってる恋人同士でも早めかな? 経験ないから良く分かんねーけど。
それで、俺が先輩に惚れてるって気づいたのは、先輩とセフレになってから3ヶ月くらい経ってから。だから俺の片想いは大体2ヶ月くらい経過して、そろそろ3ヶ月目に突入している。エッチの回数的には6回目くらいに気づいた計算? 割とヤッてからだな? 鈍いのかな? 俺。

こないだ先輩とヤッたのは5日ほど前だから、次にヤれるのは10日ほど先になるかな? とか考えてるあたりいじましい。別に定期じゃ無いんだから決まって2週間ごとって訳でもないんだけど、大体そんな感じ。
いつも先輩の気分で誘われるけど、俺からシようと誘ったことは今まで一度もない。最初は続くと思ってなくて、いっかいこっきりだと思ってたし、2回目以降も飽きるまでだと思ってた。そうこうしてる間に俺は五条先輩に惚れていて、そうなると今度はますます俺からなんて誘いづらくなった。
だってさ、俺がいつ先輩とシたいか? って言ったら、そんなのいつだってシたい。3日も経てば触れたくなる。いやそれどころか、毎日だってセックスしたい。そりゃさすがに毎日は多すぎるけど、出来ないから余計にシたくなる。一晩一晩は満足していても、好きだから触れたい。触れられたい。イチャつくってくらいにくっついて、キスしたい。
まあ、そんなの無理だけど。

五条先輩は泊まりでの出張任務もあるから、会えない日もある。会えない日には、俺から結構メッセ送ってるけど、先輩からの返信は少ない。
もしかして任務明けに他の人とデートとかしてる? 先輩と一緒に行動するとよく逆ナンとかされてたりするから、相手には困らないんだろうなってのは分かってる。よく行く大きな街なら既に知り合っている『友だち』もいるかも知れない。俺になんて手を伸ばすくらいなんだから、ストライクゾーンも広いんだろーな、先輩。

そういうこと考え始めちゃった夜は長くなる。五条先輩にも俺だけなら良いのに、って虚しい妄想しつつ夜中遅くまで眠れなくなる。
前に理由を言わずに伏黒の部屋押しかけていつまでもグダグダ帰らないでいたら、ものすごく迷惑そうにされた。部屋に戻る気にもなれなくて何となく談話室に居たら夏油先輩に会って、そうして夏油先輩の部屋に朝までお邪魔した。いつの間にかソファで寝落ちてたけど、雑魚寝してる俺の寝顔を写真に撮って五条先輩に送られていたのは後で知った。
たぶん夏油先輩は俺と五条先輩との本当の関係を知っているし、もしかしたら俺が五条先輩に抱いている気持ちにも気づいているのかも知れない。少し揶揄われているように感じる時があるんだよね。



五条先輩が高専不在の夜、眠れない俺が夏油先輩の部屋に押しかけてたのはもう3回目。
「味をしめたね」
少し呆れたように言う夏油先輩だけど、元々面倒見の良い人だから今夜も俺を部屋に通してくれた。

夏油先輩の部屋は、意外と男っぽい。
何となくシンプルで、それでいてこだわりの雑貨とか置いてそうなイメージだったんだけど、それは五条先輩に「女たらし」とか言われていたからかも知れない。だから、女の子ウケしそうなオシャレな部屋とかそういうイメージ。
だけどここは呪術高専内で、一般人の立ち入りはできない場所。良くも悪くも連れ込める女の子は居ないからか、結果夏油先輩の部屋は男くさい。床の上普通にダンベルとか転がってるどころか、トレーニング用マシンまで鎮座している。そして、散らかってはいないしホコリも溜まってなく決して不潔ではないんだけど、何となく雑然とした雰囲気もある。あと、フツーに本棚にウイスキーボトルとか並んでるからな。不良だな。
「インテリアだよ、中身は入ってない」
先輩は言ったけど、陶器製の中身見えないボトルをこっそり振ってみたらやっぱり空じゃなかった!
シンプルでこだわりがある部屋は、どっちかというと五条先輩の部屋だなって思うし、五条先輩と夏油先輩って似たところもあるけどこういうところは趣味違ってくるよな。

「悠仁がここに来るのは、決まって悟が泊まりの出張中だよね」
だけど3回目ともなればさすがに気づかれていたのらしいその言葉に、
「え……っ、へぇっ? そ、そーだっけ?」
俺はめちゃくちゃ動揺したの隠せなかった。夏油先輩には五条先輩との関係も、俺が片想い中なのもバレてるとは思っていたけど、それはそれでこれはこれ‪――‬気まずいことに変わりはない。
「誤魔化すの下手だよねー」
楽しげな先輩の声に、
「ほら、悟も気づいてる」
スマホの画面を見せられた。

『ひょっとして、今日も悠仁来てる?』

五条先輩からのメッセらしい。届いたのは30分ほど前だ。既読にはなってるけど返信はしてない。
「来てないよ、って言って欲しい?」
やっぱり楽しむよう言う夏油先輩に、
「いや……ウソつく必要ねーし、後でバレたら面倒くさいし」
気まずいだけで余計な波風立てる必要もないのと、こうは言っていても俺が寝落ちたらまた写真撮られそうだから「隠さなくてダイジョブです」と返した。
「まるで間男扱いだよねえ、こっちは後輩に頼られてるだけなのに」
言葉だけ聞いて、その後輩が俺じゃなく女子だったら危ういな? とか思うのに苦笑いしてしまう。
「悠仁もさ、ここに来ると悟にメッセージ送らなくなるだろ? だから露骨にバレるんだよ」
先輩のアドバイスらしきものには、「確かにそれはそう」と思うけど、だって出張先で女の子と一緒に居るかも知れない五条先輩にメッセ送りまくるのはさすがにさ……って思う俺も居るわけで。
そもそも、それが原因で眠れない夜を過ごしてるんだから。

「夏油先輩は、その……五条先輩と……付き合ってる人のこと知ってる?」
だから俺はとうとうそのことを訊いていた。今までだって訊きたい気持ちはあったけど、夏油先輩が教えてくれるかは分からなかったし、どうして俺がそんなこと知りたいのか訊ねられたら困るから押しとどまってた。それでもずっと、喉の奥にひっ付くみたいにしていつでも訊きたかった。夏油先輩は‪――‬俺の五条先輩に対する気持ちに気づいてるよな? って思う瞬間が何度もあって、だから今さらって気持ちもあった。
「‪――‬知ってる、けど。気になる?」
「気になる!」
俺ははぐらかされなかった問いに食いついた。
「君から話題を振ってくるとは思わなかった」
夏油先輩は言ったけど、揶揄うってより興味深そうだった。たしかに俺は、この手の話題苦手というか、そんなに食いつく方じゃ無かったからそう言われるのも無理はない。
「えと……五条先輩の付き合ってる人って何人も居るの?」
だから単刀直入、一番訊きたいことを最初に訊いていた。「この話はこれでおしまい」なんていつ切り上げられるかも分からないから。
「えっ?」
だけど驚くよう目を開き見つめられ、
「ひとり……だよ、知らなかったの?」
ア然と開かれた口は、しかし最後には笑ってた。
「し、知らない」
何も知らないから教えて欲しいのに、そんな風に言われると戸惑う。というか俺、やっぱ五条先輩に恋人いるの知ってるのにセフレしてるとバレてたんかな。間男って俺のことじゃん。

「夏油先輩は、五条先輩の恋人のことどう思う?」
だけど怯んでチャンスを逃す訳にはいかなかったから、更に身を乗り出して訊いたら、「ふむ」と勿体ぶるよう首を傾げた先輩は、
「あの悟をあそこまでゾッコンにさせるとか、末恐ろしいなと思っていたけど、二人を見てると分からないでもないね」
俺のこと真っ直ぐに見ながら言った。
ゾッコン‪――‬って夢中ってことだよね? えっ? え? ……五条先輩って本命にはそんな感じなの? 俺ともセックスしてんのに!?
もしかしたら「だから諦めなよ」って言われてるのかも知れなかった。「君はただの暇つぶし、入れ上げても見込みはないよ?」って忠告なのかな?
「五条先輩は、そこまでガチなタイプじゃないと思うけど?」
だから動揺しながらも返したら、
「でも、五条家にも挨拶すませてるんだろう? もう婚約者も同然だって。私はそう聞いてるけど?」
夏油先輩の言葉に、俺は今度こそ固まった。
そ‪――‬れは知らなかったなぁ……って浮かんだけど、そもそも俺は相手の人のこと知らない。五条家公認で婚約者も同然ってことは、それなりの呪術師の家系のお嬢様とかなんだろうか?

「そんなことまで話すんだ?」
「まあね、ああ見えて浮かれてるんだよ悟は」
「浮かれて……

「初恋らしい」
「初恋……
「知らなかった?」
……うす」

さっきから夏油先輩は俺が相手のことを知ってるって前提で話してるけど、俺はその人のこと何も知らない。会ったことはおろか、顔も見せてもらったことないし、もちろん名前も知らない。先輩は俺がその人のこと知ってると思ってるから名前も口にしないけど、それはそれで幸いだった。正直いまは知りたくない。

「悟はさ、私の言うことは文句言いながらも大抵聞き分けるんだよ。信頼してもらってるってのもあるんだろうけど、根は素直なとこあるから」
それはそうだと思う、五条先輩は夏油先輩の忠告なら何でも耳を傾けるだろう。
「でもね、こと愛しのダーリンに関しては全く話を聞きやしない。最初の頃は手を出すのはやめておけって何度も言ったし‪――‬せめてまだ早いって言ったのに聞きやしない」
どこか軽く嘲るような口調混じりで言う夏油先輩の言葉は残酷で、
「浮かれた悟にここまで執着されてるのは可哀想に思うけど、もう私の手には負えないよ」
最後にはため息をついて俺の反応を伺うよう見てたから、
「執着……
俺はぼんやりとしたまま呟いてた。
「知らなかった?」
「そういうのは……あんまり」
「悠仁は鈍い方?」
そりゃ、鈍くなきゃ恋人のいる相手とセフレなんて出来ないと思うけど? それにたぶん五条先輩は、俺に彼女いること気づかれてないって思ってる。

「だけど、がっついて嫌われたくはないから、なかなか手が出せないらしい」
今度は薄く笑って言うけど、
「まだ、してないって?」
五条先輩って本命にはそうなんだろうか? 俺のことは両手いっぱいになる数だけ抱いたのに、本命相手には慎重になるってこと?
「いや、さすがに悟にそれは現実的じゃないだろ」
でもそれは否定されて、胸の中どこか拗ねるような気持ちが浮かびかけていた俺に冷や水が浴びせられる。‪――‬そうだよね。
「セーブしてるけど、本当なら今の3倍はヤリたいって」
「3倍……
3倍ってことは、今の俺らのペースなら2週に1回……月に2回が6回ってことになる。それなら5日に1回くらい? 俺だったらそれだけ求められるのめちゃくちゃ嬉しいし、もっと多くったっていい。だけどそれほど大事にされてること、羨ましくもある。
「おっと‪――‬今のは口を滑らせた、内緒にしてくれる?」
俺の反応をどう捉えたのか、夏油先輩はわざとらしくシリアスな顔を作って言うから、
「ははッ……
俺は乾いた笑いをこぼすのが精一杯で。

「よかったね」
穏やかに聞こえた夏油先輩の声に、俺は気付かされた。

五条先輩が本命の彼女との行為を抑えてる代わりに、その欲の受け皿となるための俺がいるんだって。だから、本来なら3倍シたい‪――‬残りの2回分だけ俺は抱かれてる。本当ならそれは彼の恋人に向けられるはずの欲望で、そうでも無ければただの後輩の俺が五条先輩みたいな人に抱いてもらえるはずがないって。抱いてもらえて、代わりに使ってもらえて、セフレになれて‪――‬「よかったね」。

テンションは感じてなかった。張り詰めさせていたつもりも無かった。だけど、ふっつりと切れるような微かな感触が確かにあった。
……ッ、悠仁!?」
夏油先輩の声に、俺はビクッて反応する。震えたら、あふれた涙が止まらなくなって、俺は自分の頬に触れながら困惑する。だって分かってたことじゃん! って、知ってたはずなのになんでこんななってんの!?

「悠仁、どうしたの?」
本音で困惑してるって表情の夏油先輩は悪くない。全部知ってたくせに目を背けていた俺の責任だ。
「先輩、五条先輩には言わないで」
俺はそれだけしか言えず、パーカーの袖で雑に目元を拭ったけど止まらない。
「悠仁、私と君との間にはもしかして認識の齟齬があるんじゃないか?」
ティッシュを渡してくれながら、困惑よりも混乱するような声がなだめるみたいに優しく震える。
一瞬だけ引いた涙がまたぼろぼろこぼれるのを感じながら、
「五条先輩とはセフレだけど、俺、五条先輩のこと本気で‪――‬」
告白のよう言った俺の言葉は、
――‬ガチャ!
ノックもなく開かれたドアの音に途切れた。
反射的に振り向く俺と同時に夏油先輩の視線も向けられていたようで、
「‪――‬ハ? なに……悠仁泣いて……ア"ァッ!? 傑テメー、悠仁泣かした?」
俺らを見下ろす視点から、戸惑いと同時にキレる五条先輩の低音が降ってきて、俺の涙はまた引っ込んだ。

「悟、落ち着いて」
対照的なほどローテンションでなだめる夏油先輩の声に、
「大事な恋人泣かされて‪落ち着いてられるか!!」
深夜とは思えないような声を上げる五条先輩が噛みつきながらズカズカと入ってくる。

「‪――‬へっ?」
ひっくり返った声を発してたのは俺。しゃっくりみたいな声出ちゃったのは、変な幻聴聞こえたと思ったから。
だけど夏油先輩は激昂する五条先輩のことなんて鼻白むようスルーして、
「よかったね、悠仁」
既視感のある笑顔で言った。
「あ"?」
思わず赤面していた俺の側で、唸るような五条先輩の声が上がる。何があったのか、何を分かり合っているのかと、当惑しつつ俺の肩抱き寄せる腕が強くて身体が傾ぐ。

「『恋人』の悟に会えない寂しさに泣くなんて、悠仁は君には勿体なく可愛い『恋人』じゃないか。頼むからこれ以上君ら『恋人同士』の惚気に、私をつき合わせないでくれないか」

夏油先輩が何度も念を押すよう『恋人』と重ねるのに俺はドギマギしたけど、三度目にその言葉を聞いた時にはその意図を察した。
つまり‪は、‬「悟のことが好きならば、これ以上拗らせずにそのまま『恋人』に収まってしまえばいいだろう?」‪――‬ってこと。

俺はまだ何か言いたげな五条先輩の腕を掴むと、「おやすみなさい!」を言いながら先輩のこと部屋の外に引っ張ってく。
「おい、悠仁、おま‪――‬」
そして閉じたドアに先輩を押し付けるようにして、首に抱きつきつま先立ち、キスをした。

五条先輩が俺のこと「恋人」って言った。確かに言った。幻聴を疑うくらい信じられなかったけど、夏油先輩が念押ししてくれた。
‪なあ、五条先輩‪――‬先輩の恋人って俺だったの? いつの間に? 俺に夢中って本当? 恋人はひとりだけ‪――‬俺だけってガチ? 俺が初恋なの? 俺、確かに先輩の実家行ったとき親御さんに挨拶したけど、家で世話になるからって自己紹介しただけだよな? あれで婚約者も同然ってのは無理があると思わねえ? そんなの、夏油先輩でも手に負えないくらい浮かれてるって……本当みたい。本気にするよ? いいの?



離れた唇に更に食いつかれ、ここ廊下だからね? と今更ながら思い出し、慌てて押し離したらふにゃっとほころんだ口元にドキリとした。
「今日泊まりじゃなかった?」
誤魔化すよう訊いたら、
「最終の新幹線ギリ間に合った」
耳元に寄せ言った唇がまたキスして来ようとしたのから顔をそらすと、笑う息を弾ませた五条先輩は俺を縦抱きに抱き上げ、長い足で数歩の距離で自室の前に立った。
「五条先輩」
「んー?」
ポケットの鍵を探る先輩の耳元で呼ぶ俺に、先輩はくすぐったそう答えたけど、その頬にキスを落としたらまた笑ってた。
「今日サービスいいな、そんな寂しかった?」
ドアを開けながら訊かれ、
「うん‪――‬寂しかった」
ずっと寂しかったよ‪――‬ギュッと抱きしめたら、それより強い力で抱き返されて痛いくらいだ。

「ね、先輩」
「うん」
「エッチしよ」
……――‬ッ、おう」
一瞬淀んだ息のあと返ってきた声に俺は急に恥ずかしくなったのは、それは初めて俺から先輩を誘う言葉だったから。

俺を抱き上げたまま部屋の中ズンズン進む先輩は、一歩も足を下ろさせないままだった俺をなだれ込むようベッドへ押し倒した。煩わしいものでも払うよう外したサングラスは放り投げられ、またキス‪――‬今度は深くて長いキスをされる。
「いつもの3倍シよ」
息継ぎするよう離した唇で言う俺に、
「傑からなんか聞いた?」
先輩の顔歪んでしまったから、笑う。歪んでいてもキレイな顔が俺を見て、そのライトブルーの瞳は機嫌を損ねると言うよりちょっと拗ねてる?

「ん? 俺は5倍はシたいなあ……って♡」
だけど俺に覆いかぶさる先輩の腰を太ももで挟んで、おでこ全開になるほど髪を掻き上げ引き寄せたら、
「マジで? シよ♡ 5倍シよ」
頬を緩ませキスしてくる先輩の手がパーカーの下に着ている俺のシャツ、引っ張り出して潜り込んでくる。

「俺さ、」
「うん」
「五条先輩が大好き」
「えっ?」

俺の言葉に驚いた顔した先輩だけど、すぐに嬉しそうに口角を上げたから、すごく嬉しそうにされたから、それだけで‪――‬ずっと抱えてた不安とか寂しさとか切なさが全部全部溶けてった。
俺の生まれて初めての告白に先輩は当たり前って思ってるみたいにして、だけど初めて声に出したその言葉にまた口の端を緩んでる。
「悠仁♡」
先輩は俺のこと好きって言ってくれなかったけど、当たり前みたいにして甘い声で俺の名を呼び、またベロを絡めるキスをする。
「‪そーいうこと言われッと……たまんねぇんだけど?」
そして鼻先でこぼされた呟きに、俺はゾクッと震えた。

たまんないのは俺の方だよ先輩。
恋人エッチしながら、いっぱい「好き」って言って、五条先輩にもいっぱい「好き」って言わせてやるよ?
好きで好きでたまんないから、このまま素知らぬ顔で『恋人』になってあげる。
もう眠れない夜はないかも知れないけど、もしもそんな夜が来ても‪――‬その時はこの腕の中に潜り込めるだけの自惚れを俺は手に入れた。