ナガレ
2022-10-28 23:11:42
4013文字
Public
 

トライアングルハッピー(ぶぜまつ)※サンプル

2022/12/11 Dozen Rose Fes .2022「Be with Me!!」で頒布予定の小説本のサンプル(冒頭部分)豊前と毛色の違う松井二振りが仲良くスケベする、ハッピーさんぴーぶぜまつまつです。サンプルには入れていませんが、しっかりヤることヤってるのでR18です。【注意】三振りとも初対面。豊前と松井①は経験者

 場所は現世、二〇一〇年代の日本。とある繁華街の大きな駅の喫茶店の前で待ち合わせをしている豊前江は、電子デバイスのメッセージと指定された喫茶店の前に集う人間達を見比べていた。
 送られてきた自撮り画像によると、待ち合わせの相手は濃い紺色のチェスターコートにストールを巻いていて、足下はショートブーツを合わせている。たぶんあれかなと目星を付けたのは、豊前と同じように電子デバイスに目を落としている人物。Iラインのシルエットの爪の色は、緑の入った青色だった。――彼で間違いない。豊前は人波を避けながら彼に近づいた。豊前の気配に気づいた相手が顔を上げる。よく知るその顔は探していた相手に間違いなかった。
――○○○本丸の松井江?」
「そうだよ。君は×××本丸の豊前かい?」
「おう。今日はよろしくな」
「こちらこそ。……楽しみだよ」
 そう言うと彼――松井江は目を細めて、ふっと蠱惑的な笑みを浮かべた。場慣れしているその笑みに、豊前の期待もぐっと高まってくる。それと同時に自分に対するハードルも上がったなと豊前は感じた。

 豊前と松井は所属する本丸が違う。演練で対戦する事も無くて、顔を合わせるのは今日が初めてだった。何なら知り合ってからまだ一週間足らずである。互いに知っているのは名前と所属する本丸の名前だけ。相手の顔は自本丸の同位体を見ればわかる。短い文面でのやりとりを数回した後、互いに合いそうだと思ったので一度会う約束をした。
 待ち合わせは現世の駅前で、先に外泊届も出しておく。合わなかったら適当に切り上げて帰ればいい。そんな調子で話はさくっと纏まった。
 さて、この二振りは一体どこで出会ったのか。――刀剣男士達の交流ツールである。そういう出会いを求めるのは人の子だけと思うが無かれ。誰が作って広めたのか真相は不明だが、刀剣男士達の間でひっそりと口伝されていた。
「君にお任せしてしまってよかった?」
「おう。ここでどうだ?」
「いいね。綺麗だし広そうだ」
 今日の行き先を尋ねた松井に、豊前は電子デバイスの画面を切り替えて予約先のサイトを見せた。オープンしたばかりだというその宿泊施設は、オープン記念価格で値段もお手頃。口コミの評価も高かった。楽しく遊ぶにはちょうどいい。
 このまま直行してもいいし、どこかで少し時間を潰してから行ってもいい。飲食の持ち込みができるなら、何か飲み物でも調達してから行こうか。豊前が松井に問い掛ける。
 買いたい物があるのでコンビニに寄りたいと申し出ようとした松井は、ある事に気がついた。今日は〝三振り〟で遊ぶと事前に聞いている。しかしこの場には、豊前と松井の二振りしかいなかった。
「ところで、もう一振りは?」
「ちょっと離れた所で待ち合わせにしたけ。迎えに行ってくる」
 松井はもう一振りが誰なのかを知らない。二振りの間で話が纏まった後で、豊前からもう一振り誘ってもいいかと聞かれた。相手の了承が取れるのであれば、別に松井は構わない。松井がそう返してから少しすると、豊前からもう一振り見つかったと連絡が来た。
 松井が知るのはここまでだ。見ず知らずの三振りが落ち合うよりも、相手を知る豊前が一振りずつ捕まえて合流した方が効率的だろう。松井はそこのコンビニで買い物をしていると豊前に告げて、迎えに行くその背中を見送った。

 駅前の喫茶店から少し離れた広場の長椅子。そこには一振りの松井江がいた。オーバーサイズの白いニットに黒色のスキニーパンツ、帆布の斜め掛け鞄。スキニーパンツとフラットシューズの間からは、白くて細い足首が見えている。同じ松井江でも、服装の好みには個体差があるようだ。その松井江は電子デバイスを握りしめて、そわそわと辺りを見回していた。
 おそらく彼が待ち合わせの相手だ。そう直感した豊前は、『今着いた』とメッセージを送った。直後、視線を電子デバイスの画面に落とす松井江。――当たり。豊前は警戒させないように、爽やかな笑みを浮かべながら松井江に近づいた。
……×××本丸の豊前だ。待たせちまったみてーだな。悪ぃ」
「えっと、その、僕も少し前に着いたから気にしないで」
 顔を上げた松井江はそう言うと、ぎこちなく豊前に向かって微笑んだ。顔には来てくれて良かったという安堵の色が浮かんでいる。どうやら緊張している様子だ。当然だろう。彼も先の松井と同じく、数日間文字のやりとりをしただけで、今初めて豊前と顔を合わせたのだから。
 もう一振りはあっちに待たせているんだと言うと、豊前はさりげなく松井江の手を取った。あまりにもさりげなさすぎて、松井江は手を取られた事にも気づいていない。
「じゃ、行くか」
 松井江が小さく頷いたのを確認すると、豊前は人の間を縫うように通り抜けて松井の待つ喫茶店の前に戻った。ちょっとこれはまずい事になったかもしれないと思いながら。

「今からどーする? どこか行きたい所あるなら付き合うけど」
 豊前と松井江は喫茶店の前で松井と合流した。
 ふーん……と何やら含みを持たせた松井の声に、松井江は豊前に手を取られている事に気がついた。慌てて豊前から手を離した松井江は、今の今まで気づかなかった事を恥じているのかそれとも照れているのか、耳の先が赤く染まっている。松井江の反応に、松井はちらりと豊前に視線を送った。送られた視線には豊前を咎める色が見え隠れしていた。
……折角だし、少し話でもしないか。喉が渇いてしまったから何か飲みたい」
 君は?と尋ねられた松井江は返事に窮した。こういう時は何と答えるのが正しいのだろうか。焦る松井江の目に、目の前の喫茶店の広告が目に入った。
 期間限定、ブラッドオレンジジュース。……赤いオレンジジュースは初めて見る。どうしよう、すごく気になる。でも、ここで自分の意見を言ってもいいのだろうか。同位体の僕は喉が渇いたから何か飲みたいと言ったから反対はされないと思うけれど、今日の目的は……
「そーだな。目の前に店もあるし。よし、ちょっくら空いてるか聞いてくる」
 松井江の逡巡に目敏く気づいた豊前は、そう告げるや否や店の中に入っていった。そしてすぐに戻ってくる。どうやら席は空いていたらしい。僕達も行こうかと松井に先導され、松井江も店の中に入った。こういう店に来るのは初めてだ。そもそも現世に来た事も数回しかない。店員に案内されたのは窓際のテーブル席。窓側奥の席に松井、その隣に豊前が座ったので、松井江はテーブルを挟んだ向かい側に座った。
「飲み物は他にも色々とあるけれど、これが気になっていたんだろう?」
……気づかれていたのか」
「僕も気になったからね。君もたぶん気になるだろうと思っていた」
 というわけだから、僕達は期間限定のブラッドオレンジジュースで。二振りがメニューを見ている間に豊前も注文を決めていた。豊前は店員を呼び止めると、ジュースを二つと自分用のアイスカフェオレを頼んだ。
 もう夕方を通り過ぎて夜に近いというのに店は混んでいる。飲み物三つとはいえ、出てくるまで少し時間がかかるかもしれない。その間に自己紹介でもしようかと思ったが、改まって自己紹介をする必要はあるのだろうか。もしかしたら会うのはこれきりになるかもしれないのに。
 松井江は完全に緊張している。空気を和らげるために口火を切ったのは松井だった。
「僕、自分の同位体と話すのは初めてなんだ。よろしくね」
「僕もだ。よろしく」
 松井は一振り目として顕現しており、二振り目はまだ来ていない。万屋街や演練の場で同位体を見かける事はあっても、こうやって実際に話をするのは初めてだった。それは松井江も同じで、まだ発足して日の浅い本丸には江の者が自分と篭手切江しかおらず、豊前江を見るのも初めてだった。ちなみに豊前は二振り目で、本丸には松井江もいた。
 豊前や松井があれこれ質問し、松井江が答える。顕現してまだ日が浅く、知らない事ばかりだという松井江。豊前と松井が刀剣男士のいろはや、この世界についてのあれこれを教える形で話は弾んだ。松井江の緊張も次第に解れていき、言葉の端々にお国言葉が混じり始める。良い傾向だ。
 そうこうしているうちに、注文した飲み物がやって来た。赤い色をしたオレンジジュースに松井江の目が釘付けになっている。――話は一度中断だ。三振りは飲み物に手をつけた。
……あんな初心な子捕まえて、大丈夫?」
 初めての現世の喫茶店で飲むジュースに夢中になっている松井江に聞こえないよう、松井は声を落として豊前に尋ねた。もう一振り誘いたいというから、それなりに経験のある者を連れてくるとばかり思っていた。でも実際に連れてきた彼はどうだ。経験のけの字も無さそうだし、むしろ今日の趣旨を理解しているのかも怪しい。
「僕は日を改めてもいいよ」
「そーだな……
 近くに複合遊戯施設があったはずだ。あそこなら何でもある。今日の目的からは外れるが、健全に楽しく遊べそうだ。松井とはまた後日予定を合わせればいい。豊前は何かしたい事はあるかと松井江に尋ねようとした。現世の事はほとんど知らない様子だから、特に希望が無ければこちらで決めてもいいだろう。ところで……と豊前が切り出すよりも先に、ジュースを飲み終えた松井江が「あの!」と二振りに声を掛けた。
……まだ行かないの?」
 今日は三振りで楽しく遊ぶために集まった。その行き先は複合遊戯施設ではない。松井江は正しく今日の趣旨を理解していた。


----------
こんな感じで始まります。挿入方向は豊前→松井それぞれのみ。まつまつのキス描写あり(少量)、Wまつフェラシーンあり。
A5二段組み/表紙等込24ページ/R18/価格未定

表紙と裏表紙はこんな感じ。



【Wavebox】https://wavebox.me/wave/dt3sbq0apzlnkkwl/
↑ Waveboxです。匿名メッセージを送ることができます。何かあればどうぞ!