ナガレ
2021-01-28 22:06:39
3368文字
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江ちゃん達が肉を食べに行く話

江四振りが現世に肉を食べに行く話。打刀と脇差は食べ盛りの大学生と高校生のイメージ。書いてる私がぶぜまつの人間なので、その辺りご了承ください。

「第n回本丸お食事券争奪戦・打刀の部、優勝は豊前江と松井江〜!」
「っしゃぁぁぁ!」

壇上で審神者がそう告げると広間に拍手が湧いた。豊前江は思わず立ち上がってガッツポーズをし、松井江は無言で拳を突き上げた。その隣で桑名江と篭手切江が互いに手を取り合ってやったぁ!と喜んでいた。

「二振りには現世の某焼肉チェーン店の優待券を贈呈しまーす」
「お前ら!早速肉食いに行くぞ!」

審神者から目録を受け取るや否や、豊前は壇上からそう宣言した。外野が自分も連れていけと野次を飛ばしているが、そんなのは無視だ。これは体を張って恥を捨て、江の団結で掴み取った戦利品なのだから。体を張ったのは豊前で、恥をかなぐり捨てたのは松井だが。


*****


数日後、江の者達ご一行は現世の某焼肉チェーン店に来ていた。篭手切が気を利かせて予約していた事もあり、入り口で名前を告げるとすぐ座敷席に通された。本丸では畳生活なので、テーブル席よりも座敷席の方が気楽だった。さすが気遣いとお手伝いの脇差。その辺りもちゃんとわかっている。
座敷席の奥に豊前が座り、その対面には松井。豊前の横に桑名が行き、松井の横に篭手切が座った。いつものフォーメーションで席に着くやいなや、松井は胸ポケットからボールペンとメモ用紙を取り出した。

「いいかい?貰った優待券の金額を超えたらそこで打ち止めだ」
「おうよ」
「早速注文しますね。皆さん、最初の飲み物はいつもと同じでいいですか?」
「うん。できればライス大盛りも先に頼んでほしいな」
「お任せください」

四振りとも若干の好き嫌いはあれど食べられないものは無いので、とりあえず食べてみてから追加をどうするか考える作戦だ。篭手切が通りかかった店員を呼び止めた。

「ここからここまですべて二人前ずつお願いします。飲み物は生びーるの中を二つ、かしすおれんじを一つ、烏龍茶を一つ。あと、ご飯の普通盛りと大盛りも一つずつお願いします」

メニュー表のここからここまでと指差され、店員がえ?という顔をしたが、篭手切は笑顔でそれを躱す。江は見かけによらずよく食べる。目を丸くされる事も、引き攣った笑みを浮かべられる事も慣れっこだった。

「飲み物だけ先に持って来てもらってもいいですか?」
「あ、はい……

これだけ頼んで食べきれるのかと、疑心暗鬼の表情で立ち去る店員。彼らに言わせてみれば、これはまだまだ序の口だ。一通り食べてから美味しいと思ったものを追加で頼む気満々なのだから。
飲み物はまだか肉はまだかとそわそわしながら待っていると、店員が飲み物の入ったジョッキとグラスを持って来た。篭手切の前に置かれるのは烏龍茶の入ったグラス。見た目を考えれば当然だ。残りの中ジョッキ二つとカシスオレンジのグラスは、それぞれ豊前と桑名と松井の前に置かれた。店員が去ると、奥の二人は無言で中ジョッキとグラスを交換した。これもよくある事である。

「飲み物来たところで、桑名よろしく」
「はいはーい。えーっと、豊前と松井が体張ってくれたおかげで肉にありつけました。ありがたく頂かないとね。かんぱーい」

乾杯!とジョッキとグラスが四つ掲げられ、江の宴が始まった。







「すいませーん、ライス大盛り追加お願いします」
「ろーすとかるびとはらみも二人前ずつください」
「篭手切。僕、塩タン食べたい」
「あと、塩たんも二人前で。りいだあは何を食べますか?」
「ロース頼んで」
「さっきの注文、ろーすだけ三人前にしてください」

あれだけあった肉が次から次へと四振りの胃の中に消えていく。追加注文も何度目だろうか。桑名と篭手切のライスおかわりも何回目かわからない。脇差と侮ることなかれ、江の中で篭手切は桑名の次によく食べる。そんな二振りの食べっぷりを見ながらマイペースに肉を焼く豊前と松井の前には、空いたジョッキとグラスが溜まっていた。
片方はひたすら生中としか言わないし、もう片方はカクテルを上から順に飲んで二周目に突入している。いつの間にか桑名はわかめスープに切り替えていた。

「折角なら上も頼んでみてーな……
「松井さん、計算どうですか?」
「ちょっと待って……うん。まだいけそう」
「本当?ライスと上ロース四人前くださーい」
「桑名!」

しれっと店員を呼び止めて追加注文をする桑名。上ロース(しかも一度に四人前!)に加えてライスも追加されると思っていなかった松井は、慌てて計算し直した。
再計算した松井は、ちらと豊前に視線を送った。――そろそろ打ち止めになりそうけど、どうする?

「おねーさん、ついでに石焼ビビンバも二つ頼むっちゃ。一つは大盛りで。取り分け皿も一つ。あと、冷たい水くれ。……松井、これでどうだ?」
「うん。いい感じに足が出た」
「そんなら今日は終わりか」
「あちゃー。デザートまでいけなかったね」
「では、何か買って帰りましょう!」

腹八分目と言うが、食後のデザートは別腹だ。篭手切の提案に三振りは秒で乗った。これだけ食べれば顔を覚えられてしまっただろうから、しばらくこの店には来れない。刀剣男士は陰日向の存在。時代が違うとはいえ、あまり表に出てはいけないのだ。
名残惜しさを感じながら上ロース(とライスと石焼ビビンバ)をきっちり完食すると、四振りは箸を置いてごちそうさまでしたと両手を合わせた。いつだって、いただきますとごちそうさまは忘れない。


店を出て、のんびりと歩いて帰る。久しぶりの外食が楽しかったのか、篭手切はずっとニコニコと笑い、あれが美味しかったこれが美味しかったと桑名に話しかけている。桑名も良かったね美味しかったねと篭手切に相槌を打っていた。その姿は完全にお兄ちゃんと弟だ。
後を行く豊前と松井がコンビニの前で足を止めた。豊前は先を行く篭手切を呼び止めると、コンビニを指差した。

「何か甘いやつ適当に選んできてくれ」
「はい!桑名さん、一緒に行きましょう」
「いいよぉ。この時間だと篭手切だけじゃ何言われるかわかんないからね」
「おー、行ってこい。俺ら外で待ってっから」

店の中に入ると、桑名と篭手切はアイスクリームの入った冷凍ケースの前で吟味を始めた。口直しにシャーベットを食べたい気分だったが、残念な事にあまり種類が無かったので、今日のデザートはアイスクリームだ。

「何にしようか」
「ばにら、抹茶、すとろべりー、ちょこれーと……
「ねぇ、篭手切。これどう?」
「色々な味の詰め合わせですか?二箱買えばよさそうですね」

冷凍ケースから六個入りのアソートパックを二箱出すと、桑名と篭手切はレジに向かった。店員は一瞬篭手切を見たが、隣に桑名がいたので特に気にせず会計をしてくれた。
桑名と篭手切が中から出てくると、豊前と松井は篭手切に見えないところで硬貨を何枚か桑名に押しつけた。脇差の偵察値で気づいてるが、言わぬが花というやつなので篭手切は何も言わなかった。たまには弟扱いされるのもいいだろう。

「あいすくりーむ、色んな味があるんですよ。松井さんは何にしますか?」
「赤いのがいいから、いちごにしようかな」
「りいだあはちょこれーとで、くわなさんがばにら。私は抹茶にします」
「豊前が一番の甘党だなんて誰も思わないよね」
「そして猫舌」
「そこ、聞こえてっぞ!」

ふと、豊前の目に「海鮮炉端焼き」の文字が入ってきた。海老、帆立、烏賊――豊前の脳裏で炭火焼きの海の幸が駆け回る。

……次は海鮮焼きでも食いに行くか」
「いいね」
「海鮮ならマグロの漬け丼も食べたいな。赤いし」
「給金から積み立てでも始めますか?」
「豊前はきれいに全部使い切ってるから無理だと思うよぉ」
「おい」

帰還用に指定された転送場所はもう少し先だ。腹ごなしも兼ねて歩くのには丁度いい。アイスクリームが溶ける前には帰れるだろう。一度に三つも食べるとお腹が冷えるから、アイスクリームは一つだけで我慢。残りは名前を書いて厨の冷凍庫に入れておこう。きっと明日には全部食べ切って無くなってしまうんだろうなぁと篭手切は思った。


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江ー!お腹いっぱい食べてくれー!


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