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ナガレ
2020-12-03 21:52:50
2317文字
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高嶺のまついさん(学パロぶぜまつ♀)
桑名から見た、幼馴染に恋した親友の話の導入。続きは未定。
(桑名視点)
高校一年生の四月、親友ができた。同じクラスで席が近く、たまたま選択科目も被っていた事をきっかけに仲良くなった。二年生も三年生も同じクラスになり、今では無二の親友というか、悪友だ。
そんな親友の名前は豊前。運動神経抜群で男子バレーボール部のキャプテン。面倒見もよく、明るく爽やかでみんなに平等。頼られると嫌と言えない性格なのか、文化祭や体育祭ではクラスの中心に祭り上げられている。そして何より顔がいい。男の僕でもそう思うんだから、彼の人気っぷりは推して知るべし。
入学以来両手の指では収まらない数の女の子に告白されたのを知っているが、豊前は毎回丁寧に断っている。今は部活が一番だからそれ以外は考えられないし考えたくないと言って。事実、この学校のバレーボール部は強豪らしく、毎日遅くまで部活をやってるし朝練もあるし、時には土日もしっかり部活があるらしい。
そんな中、二年生の冬
――
二月のバレンタインデーの頃に事件が起きた。いつもの断り文句では諦めずに食い下がった子がいたのだ。なかなかしつこかったのか、豊前もついポロっと言ってしまったらしい。「好きな人がいるから何を言われても無理だ」と。
翌日の教室は大騒ぎだった。学年一、もしかしたら校内で一番人気の片想いが発覚したのだから。しかし豊前は頑として口を割らなかった。僕は人気者は大変だねぇと完全に他人事だったのだが、ある日気づいてしまった。豊前が目で追っていた相手に。
豊前は思っている事を無意識で口にしてしまう時がある。今もそうだ。昼ご飯を食べながら渡り廊下の向こうを見てポツリと「
……
移動教室?」。豊前の視線の先にある渡り廊下の向こうは特進クラスの校舎。結構な距離があるのに見えたの?相変わらず目がいいね。
「豊前、口に出てる」
「マジで?」
「うん」
はぁぁぁと大きなため息をついて机に突っ伏す豊前。僕も初めて知ったんだけど、彼はすごく奥手というか、純情だ。クラスメイトの女子には普通に話し掛けるし手も貸すのに、本命は遠くから見るだけで精一杯。まだ名前も知らないらしい。
「まだ五月だけど、卒業までこの調子でいいの?」
「どうこうなりたいってわけでもねーし、別にいいかなって」
「ふーん。で、本音は?」
「
……
うるせー」
あ、逃げた。紹介できなくもないんだけど、豊前から直接聞いているわけじゃないし、彼の想い人が自分の思い当たる人物と合っているかの確証がない。親友には幸せになってもらいたいんたけどな。
*****
(同時刻の特進クラス)
「
……
しまった」
今日の午後一番の授業は美術だ。余裕を持って美術室に移動しようとしたところで、教科書を忘れてきたことに気がついた。
「歌仙、先に行ってて。教科書忘れたから借りてくる」
「借りてくるって、誰に?」
「普通科の知り合い。美術は同じ教科書使ってるはずだから」
「わかった。先に行ってるよ」
渡り廊下で友人と別れると、メッセージを一つ送ってから急いで普通科の校舎に向かった。
*****
――
ピロリン♪
メッセージの受信音が鳴った。一体誰だろうかと、スマートフォンを確認する。珍しい相手から『美術の教科書を貸してほしい』と簡潔な一文だけが来ていた。
「美術、美術
……
あれ?無いや」
たいていの教科書はロッカーの中に入れっぱなしなのだが、運の悪い事に美術の教科書は入っていなかった。そういえば、昨日か一昨日持って帰ったような気がする。
ごめん持ってないと返そうかとスマートフォンをポケットから出したところで、ふと思いついた。
――
これ、豊前にとってはチャンスじゃない?
「豊前ー、美術の教科書持ってない?あれば又貸ししてもいい?」
「ちょっと待て
……
あった。いーぜ」
同じようにごそごそとロッカーの中を漁り、美術の教科書を引っ張り出す豊前。ちょうどその時、教室のドアからひょこりと覗く顔が見えた。ナイスタイミング。
「ごめん、桑名。美術の教科書貸して」
思わぬ人物の登場に、教科書を持ったまま豊前がとても分かりやすく固まった。遠くから見ているだけで精一杯の相手が目の前にいるんだもん。もしかしたら声も初めて聞いたんじゃない?
「僕も持ってなかったから友達に借りた。豊前、貸していいんだよね?」
「え?あぁ、どうぞ
……
」
「ありがとう。授業終わったら返しに来る」
その子は豊前から教科書を受け取ると、胸に抱えて早足に戻っていった。後姿が廊下の向こうに消える頃、ようやく状況を飲み込んだ豊前に思いっ切り肩を掴まれた。
「
……
桑名」
「えーっと、知り合いっていうか、幼馴染?」
ご近所さんで母親同士仲が良く、同じ小学校、同じ中学校に通った幼馴染。まさか高校まで同じになるとは思っていなかったけど。豊前にあの子の名前は松井だよって教えてあげると、まついさんって小さな声でリピートした。まだ予鈴前でざわついている教室は、誰も今のやり取りを気にしていない。
「気づいとったんか
……
」
「たぶんそうだろうなとは思ってた」
バレていた事が気恥ずかしいのか、片手で顔を隠して明後日の方向を向く豊前。ファーストコンタクトの機会は作ってあげたんだから、あとは自分で頑張って。あんまりお節介はしたくないけど、相談には乗ってあげるから。
――――――――――
親友と幼馴染もとい腐れ縁のあれこれに桑名が巻き込まれる話
……
になるといいな。
桑名と豊前
…
普通科クラス。今回は出てこなかったけど、加州や兼さんとかもいる。
松井と歌仙
…
特進クラス。今回は出てこなかったけど、青江と蜂須賀もいる。
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