ナガレ
2020-10-12 21:39:29
2157文字
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現パロぶぜまつ(社会人ver)

ルームシェアという名の同棲ぶぜまつ。世話焼き豊前と社畜の松井の話。
豊前にはTHE・男の手料理を作ってもらいたい。そして松井に食べさせてあげてほしい。

時刻は夜の七時過ぎ。松井は未処理の書類を全て引き出しの中に入れ、鍵を掛けた。パソコンもシャットダウン済みだ。帰る気満々の松井に同僚や後輩から悲壮感漂う眼差しが向けられた。が、今日は無視させてほしい。これ以上居残るわけにはいかないのだ。
上司の何やら物言いたげな視線を避けるようにしながら松井は職場を後にした。今日はもう帰らせてほしい。

(つかれた……

鞄の中からスマートフォンを出してメッセージアプリを起動する。未読メッセージ無し。松井はメッセージ履歴の一番上にある宛先をタップすると、「今から帰る」とだけ書いてメッセージを送った。数十秒後に既読がついた。
家に帰れば出来たての夜ご飯が松井を待っている。連日の残業で疲れの取れない体と今にも閉じてしまいそうな瞼を叱咤しながら、松井は家路を急いだ。


*****


電車に揺られること四十分。、電車を降りてから歩くこと十分弱。四階建てアパートの三階、一番端の部屋が松井の――正確には松井達の城だ。松井はインターホンを一度鳴らしてから鍵を開けた。
玄関を開けると部屋には電気がついている。電子レンジのあたため終了を告げる軽快なメロディが聞こえた。玄関と居室を区切るドアを開けると、松井の帰宅を待っていた人物が顔を出した。

「お帰り。飯できてっぞ」

高校卒業後、松井は大学進学のために、豊前は就職のために上京した。その時はまだ別々に住んでいたが、転機が訪れたのは松井が就職一年目の冬の事。初めての繁忙期を乗り越えた松井は体調を崩した。
理由は至極単純で、食生活の乱れによるものだった。多忙と疲労でろくな食事を摂っていなかったのだ。そもそも松井は掃除も洗濯も難なくこなすが、料理だけは苦手だった。一人暮らしを始めた大学生の頃から、ほとんど自炊をしたことがない。
学生時代はそれでもまだまともな食生活だったが、就職後の数ヶ月で一気に乱れてしまった。栄養補助食品にも限界はある。そこに期末年末という業務の嵐が押し寄せてきた。
数年経った今でこそ力を抜いて繁忙期を乗り越えるコツを掴んだが、当時の松井は律儀に真正面から全力で取り組んでいた。その結果、キャパオーバーして倒れたのである。

そんな松井を案じたのが、当時はまだご近所さんだった豊前である。家賃や設備、立地等ちょうどいい塩梅のルームシェア可能な物件を探し出し、いつの間にやら契約してきた。どうせそのうち一緒に住むのだし、少し早まったところで何の支障もないとは当時の豊前の弁である。。
家賃と光熱費は折半、食費はお互いに出し合う。料理は豊前が担当し、掃除と洗濯は主に松井が担当する。豊前の家は成人した息子に口を出す真似はしないと放任状態で、松井の家も豊前が数少ない息子の友人だと知っているので賛成してくれた。
土日休みで会社勤めの松井とシフト勤務で不定休の豊前では生活リズムが異なる時もあるが、順調に二人で仲良くやっている。

「帰ってきて早々に豊前の作ったあったかいご飯が食べれるなんて幸せすぎる……
「そんな大層なものじゃねーけどな」

ほかほかご飯と出来たてのおかず、そして目の前には豊前。松井は幸せを噛みしめていた。豊前としては適当に切って炒めただけなのだが、それすらも苦手な松井としてはすごい事らしい。褒められて悪い気はしないが、手放しの賞賛が少しむず痒かった。

「松井の忙しい時期が終わったらどっか行くか?休み合わせる」
「行く!」
「早えーな」

先の楽しみがあると俄然やる気が出てくるのは何故なのだろうか。この山を越えれば豊前とデート。それだけで明日は朝からハイスピードで業務が進みそうだ。
帰る前に引き出しの中に押し込んだ未処理の書類を片づければ終わりだ。あとは後輩の仕上げた書類をチェックして、問題なければ上司に提出。そこから先は松井の仕事では無い。差し戻されない事を願うだけである。

「豊前、今度の土日は仕事?」
「あーっと……土曜が早番で日曜が遅番。悪い、どっちも出勤だ」
「わかった。死ぬ気で今週中に仕事片づける。絶対土日は会社に行かない。土曜日は夜更かしして、日曜日は朝寝坊する」
「詰めるのはいーけど、あんまし無理すんな。それで倒れたら元も子もねーっちゃ」
「過労死する前に豊前不足で死にそう……

ダイニングテーブルに突っ伏した松井が会社爆発しないかなーと物騒な事を口にし始めた。一瞬元気になったものの、これは赤疲労状態だと判断した豊前は松井を早急に寝かせることにした。寝落ちする前に風呂に入れて、布団に押し込んでしまおう。
松井は有言実行の男なので、明日は昼食を摂る時間も惜しんで仕事をしそうだ。デスクで食べられるように弁当を持たせよう。冷蔵庫の中にあるものを詰め込めばそれなりの物になるだろう。
突っ伏した松井は今にも寝てしまいそうだ。片づけと弁当の用意は後回し。豊前は寝る前に風呂行くぞと声を掛けた。足りないのはお互い様だし、この分は週末には尽くしてもらうからなと、少々邪な事を考えながら。

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カミングアウトはしてないけど、友人の一部は気づいていそうな二人(特に隠す気もない)
世話焼きの攻(後で世話代を回収する気満々)が好きです。


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