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魍魅 魎
2018-12-25 01:54:39
1786文字
Public
創作
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積み重なってきたもの / ブラッディサニー組
2017年クリスマス
聖夜が近づくころ、アルがいつもの酒場へ行きカウンターに座ると、普段あまり取引することのない斡旋屋が近づいてきた。この斡旋屋と取引があまりないのは、護衛や警護等昼間の仕事を数多く扱っているためだ。
「アス、いい所に来てくれた。一つ仕事を頼まれてくれないか。誰も請けたがらないんだが、この仕事をなんとか納めないと俺がこの町に居づらくなる」
「
……
なんだ?」
「それがな
…
」
あまりに深刻そうな斡旋屋の顔にアルが依頼内容を話すよう促すと彼は困り切った顔で説明しだした。内容を聞くにつれ、アルの目が少しずつ見開かれて固まる。
「
――
…
帰る」
「待て待て待ってくれ、聞いてたろ?内容も内容だからしくじりは許されないんだ。あんたにしか安心して頼めないんだよ。頼む!」
「
……
5割」
「5割?」
「割増」
「げぇ
…
5割なんて依頼人からとれねぇぞ!?」
「じゃあこの話をなしにするか、お前が出せば済む事だろう」
「
………
くっそー、背に腹は変えられねぇ
…
わかった出す」
「あと1つだけ依頼の中でやらないことがある。それも呑むなら請けよう」
アルの要望が受け入れられ斡旋屋との取引が成立。二三説明を受けるとアルは酒場を後にした。
塒への帰り道、アルの表情は渋い。あの斡旋屋からの依頼内容は「孤児院の子供たちへ聖夜のプレゼント配り」だった。毎年あのシスターに追い回され捜索され逃げ切れたり請け負ったりしている仕事とほぼ同内容だった。しかし今回の依頼人は街の金貸家の主人だという。
斡旋屋の話では、今年教会への寄付金が大幅に減り、子供たちへの聖夜のプレゼントが用意できなくなってしまった事、教会から一部と街の有志から募った金で人数分の菓子や小さな玩具をそろえた事、やはりプレゼントは聖夜を明けた朝に子供たちに受け取って欲しいから誰か子供たちを起こさず配り切れる手練れに頼みたい
…
という事だった。
恐らく寄付金が大幅に減ったのは、昨年の今頃シスターから請けた仕事の影響だろう。
『
………
』
『
…
アス、凄い顔してるわよ?』
『今年もやらんぞ
…
』
『残念なことに、今年は頼みたくても頼めないの。じゃあね』
数日前に街で会った、珍しく勢いのないシスターとの会話に納得がいく。
* * *
翌日、路地裏の金貸家の店のドアをノックする。
「なんだい?」
「トナカイの使いだ。物を受け取りに来た」
斡旋屋から聞いている合言葉を口にすると、どかどかという足音の後に勢いよく店のドアが開いた。
「おお!アスが請けてくれたのか!当日安心して眠れるな!」
「
……
はやくしろ」
「無駄口は厳禁だったか。すまんすまん。これだ。頼んだぞ」
「わかっている」
主人からぱんぱんに膨らんだ袋を受け取ると、アルはすぐに店を出た。
* * *
聖夜前日の夜。建物の影から影へ身を潜めながら孤児院へ向かう。呼吸をする様に窓の鍵を開け建物の中に忍び込む。プレゼントの入った袋が邪魔ではあるが、冬の仕事着で動き回る分には苦にならず、一昨年に比べれば格段に身軽で動きやすい。
各部屋を周り、それぞれにプレゼントを配ってゆく。
全員に配り終わり、窓から孤児院を後にすると、塒へ向かう。帰り道に教会の屋根に飛び移ると、礼拝堂の窓に微かに明かりが見えた。窓から覗き込むと、蝋燭を灯した祭壇にシスターが一人跪き祈りをささげていた。
「ご苦労だな」
「っ
――
!!
……
アス!?」
音を立てずに忍び込み、背後から声をかけると流石のシスターも驚いて尻もちをついた。
「お前は
…
というより、ここもあの建物も街に好かれてるな」
そういってアルは手に持っていた、プレゼントの入っていた袋をシスターに投げてよこした。
「わっと、えっ
…
これって
…
アス!!」
受け取った袋から視線を上げると、アルの姿はどこにもなかった。
空の袋には恐らく今回出資した店の名前や個人の名前が多数書き込まれていた。
アルが教会の屋根の上に登ると、そこには先客がいた。
「
――
どうした?」
「あかるい時とちがって、いまは、静かだから
…
散歩に」
煙突の上に立って、空を見上げるのは相方のレーヴだった。
「夜が明ける前に塒に帰る。一緒にいくか?」
「ん
…
。」
薄く雪の積もった屋根の上に、一つは迷いなく、一つはふらふらとした二人分の足跡が続いていた。
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