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魍魅 魎
2016-12-24 23:34:24
2559文字
Public
創作
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【ブラッディサニー組】影を闇を切り裂いて
聖夜の前日にアルに舞い込む仕事の話
軽くですが虐待の描写があるので、ちょっと気持ち悪いかも
「
………
」
不機嫌を眉間の皺や目付きではっきりと示せば大概の輩は恐怖で後退りしそのまま消えてくれるのだがこの女だけは口元の笑みはそのままに一歩私に歩み寄る。
「アス、お願いがあるの」
聖夜前にこの女に見つからないために、聖夜の7日ほど前から隠れるのが例年である。しかし今年はネスカに街娼達の護衛を頼み込まれ断れず塒を変えることもできないまま気づけば聖夜前日になっていた。
その前日の日没後に、可能な限り会いたくない相手に塒を訪ねられれば不機嫌になるのも致し方がない。
先程レーヴが散歩に出かけた事が幸いだ。
白い息をはく女
…
シスターをため息と一緒に塒に招く。
「あの仕事は、今年はやらんぞ」
「あの仕事は大丈夫。他の人にもう頼んであるから
…
」
いつもより明るさに欠けるシスターを見ると手には袋が握られていた。
「先払い。斡旋屋さんにお願いしたら断られちゃって。」
それを小さなテーブルの上に置く。
「ある男の行動によっては
…
殺してほしいの」
言葉の意味を理解するのに数秒
「
…
シスターがそんな事私に頼んで良いのか?」
「よく有ること、よ。たまたま相手が悪くて貴方に直接頼みに来ただけ。いつもは斡旋屋に匿名で依頼してるもの。これはわたしの役割。」
黒い冬の仕事着に着替え、夜の街の裏路地を屋根の上を走る。
『どうも引き取られた子が虐待を受けているらしいの』
目的地は隣町の町長の屋敷だった。拠点としている街に比べれば小さいが、それなりの大きさの町の町長が相手では
…
シスターからの頼みでも断りたくなる斡旋屋の気持ちは理解できる。私だって避けたい相手だ。敵は増やしたくない。
『夜中にベッドに潜り込んできてーー
…
』
街と町の間にある農耕地を駆け抜け、目的の町へ滑り込む。町長の屋敷は町の中央だ。周りの家々よりふた回りほど大きな目的の建物の屋根に上る。屋根裏が子供の部屋だとシスターは言っていた。
『確かな情報を得たからこんな事になっているのだけど、見に行ってもらって、もし、もし何もないなら良いの。』
屋根の上を足音に気を付けて移動する。
『でも、本当、ならその時はお願い。そんな目に遭う為に見送った訳じゃないから。』
屋根裏に忍び込めそうな窓を見つけ、鍵がかかっていないことを確認して静かに部屋へ入り込む。本来部屋として使う場所ではないのだろう、子供には問題ないがアルには低い天井に、蜥蜴のように身を低くし部屋を見回す。小さくふくらんだシーツを抱える小さなベッドに、おもちゃや本がしまわれている箱、衣類の重ねられた棚。子供のものではないだろう衣類のはみ出したクローゼットを見つけ体を滑り込ませた。子供のベッドは入ってきた窓に近く、暗さに慣れた目には寝息で上下するシーツまで確認できる。
これで陽が上るまで何もなければそれで良し。何か有れば
…
と手元や隠している刃物を確認する。何もなくこの部屋を後にできることを願っていたが、そうはいかないようだった。
階下からゆっくりと部屋のドアが開く音がし、おさえきれていない足音が廊下から屋根裏へ繋がる階段を上がって近づいてくる。
ガチャ
…
屋根裏部屋のドアがあきのっそりと影が入ってきた。まっすぐに子供の眠るベッドへ向かう。
子供の息がひきつる音、荒くなる息づかい
影が小さなベッドに被さると軋んで悲鳴をあげる
押さえ込む度に抵抗してばたつくシーツ
シスターが掴んだ情報は、本当に確かだったようだ。
クローゼットから滑るように出ると、そのままベッドへ覆い被さっている影へ振り上げた刃物を突き立て、同時に空いた手で相手の口を塞ぐ。後ろへ引き倒し本人の体重を乗せてより深く刃が身体に食い込んでいく。とどめに相手の体に片膝と体重をのせ、もう一度深く。
暴れられることもなく。あっさりと相手が息絶えたことを確認し、まだベッドで唖然としている子供へ視線をやる。私のした事になのか、私の見た目のせいか、その体がビクッとはねる。
「シスターの使いだ。お前を連れ帰るよう言われてきた。」
シスターの名前に子供の両目からぽろぽろと涙が溢れこぼれ落ちる。
「かえれるの?」
「ああ」
「ここに、もう、いなくていいの?」
「そうだ」
ベッドへ身を屈めて近づくと、大きな涙で濡れた瞳がまっすぐに見上げてくる。
「ほんとうに?」
「シスターが嘘を言うとでも?」
「いわない」
「そうだな。
…
時間がない、この袋に入るだけ持っていける。手放したくないものを入れろ」
「わかった!」
死体をかなり大回りに避けながらあっちへこっちへと移動して子供はアルが手渡した袋に人形や服、絵本を入れていく。
「終わったか?」
死体を見下ろし、立ち止まった子供にアルが話しかける。
「なんでうごかなくなったの?」
「それはシスターに聞くといい。行けるな?」
「うん」
シーツで子供をくるみ、抱え上げる。
「
……
そのめ
…
きず
…
、あのときのさんたさん?」
「かもしれないな。道のりは長い、寝ていろ。」
ここにいない相方を思い出すふわふわのくせ毛をなで、眠るよう促すとうとうととし始めた。
「この子供は返してもらうぞ?助けもせず黙って見ていたということは止めないのだろう?」
小さく呟いた言葉に反応するように、屋根裏部屋のドアがまた開き、女が入ってきた。
「あのシスターが任せてと言っていた理由がわかったわ」
「あんたが
…
」
「あたしには助けられなかった」
「そうだな」
窓枠に足をかけてそのまま屋敷を後にする。
荷物が増えている分街に戻るのに時間がかかり、教会につく頃には東の空が明るくなってきていた。
教会のドアを叩くと、すぐに開いた。
寝ずに待っていたのだろう疲労が見えるシスターに眠る子供を受け渡す。
「
……
ありがとう」
「二度とこんな仕事はしない」
「そうね。あ、あとお迎えが来てると思うわ。」
「
……
」
急ぎ足で立ち去ったアルを、シスターはいつもの笑顔で見送った。
教会の屋根の上に彼は居た。
朝日をあびて、フードから覗く彼の髪が煌めく。
「おかえり」
「ああ
……
た、ただいま」
「帰る?買い物する?」
「屋根の上を
…
」
「ん」
二人は塒へ戻るべく、教会の屋根から隣の家の屋根へ飛び降りた。
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