魍魅 魎
2015-08-16 01:02:32
815文字
Public pkmn
 

鋼の抱擁 / ズミガン

診断メーカーより。元のほぼ会話のみに加筆。
あなたは『上手く離れてあげられてよかった、一人になるまで涙を堪えられてよかった、って泣き笑いしてる』ズミを幸せにしてあげてください。

見知った男がエプロンが汚れるのも気にせず
芝生に胡坐をかいて空を見上げている。

「どうしたの?」

背中に声をかけるが、彼が振り返ることはない。

「あの人に別れを告げてきたんです。」

内容を理解するのに数秒かかった。

「あんたが?!向こうからじゃなくて?」
「はい。上手く離れてあげられたと思います」

この男は、同僚の年上の男と付き合っているが、
まともな恋愛経験がないのか元々歪んでいるのか、どうも愛情表現が過激だった。

「ふーん。で、ここで泣いてるの。」
「一人になるまで耐えたのですから、
 誉めて欲しいくらいですよ。」

普段冷たく振る舞う男が鼻をすする様は、幼さすら感じる。
元々火炎の間を担う自身も他四天王・チャンピオンともに
あまり結束が無いとはいえ今後の面倒事を思えば、
この全く吹っ切れていない同僚に声を掛けてもよいだろうと自分を納得させる。

「そうね。でも傷つけない方法を
 あんたが見つければ済むことじゃないの?」
「それが……難しいからですよ。
 傷つけてしまってから後悔するのも、辛くなって来ましたから。」
「でも、まだ好きなんでしょう?」
「ええ。」
「心の底から?」
「はい」
「一緒にいたいんでしょう?」
「その通りです

そう小さく呟き、男は力なくうなだれる。
本っ当に、面倒な男だ。
どうせ一時的にしか離れていられないだろうに……

振り返ると何時からいたのか
そこにはもう一人の同僚が静かに立っていた。

――ですって、ガンピさん」

ため息をついて、その場を立ち去る。
嗚呼、本当に面倒な男たちだ。

* * *

「えっーーー」

彼女の言葉に振り向くと、
目の前で先ほど別れを告げた相手がこちらを向いて膝まづいていた。

彼も泣いていたのだろうか、
澄んだ青い大きな瞳が潤んで
赤らんだ頬や目元と対比して目を奪われると同時に
やわらかな鋼の抱擁を受けた。