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魍魅 魎
2015-08-10 02:11:15
2363文字
Public
創作
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【創作】染み出した闇を追いやって柔らかな夢へ沈む【ブラッディサニー組】
ちょっと暗い話なのかな…?
ハグの日に間に合わなかったし、ハグしてない。
問題ある場合はご連絡ください
「知ってた?今日はハグの日なのよ。
いつも良くしてもらってるアスにはあたしのハグをーー」
「やめろ。今夜の仕事に支障がでる。」
珍しく受けた昼間の護衛の依頼は、街の高級娼婦の一人からだった。
身体に触れようとする女をひと睨みで固まらせる。
「
…
な、何よ、あたしに触れるのにいくら要ると思ってるの?」
「お前が着けている匂いがうつると他の仕事が出来ない。
…
それはちゃんと然るべきものを差し出す奴にしてやれ。」
「それもそうね。これからたんと稼いでくるわ。ありがと。」
「依頼は片道か
…
?」
「ええ。」
手入れされた赤毛をかき上げにっこりと笑うと女は富豪の館の門をくぐっていった。
* * *
「ふわふわちゃん、一人でお留守番?アスを待ってるの?」
果物屋の店の陰でマントとフードを纏い、
まるで布の塊のようになって木箱に座っているレーヴに
買い物に来た娼婦が話しかけるとレーヴはこくっとうなづいた。
「ふふっ。」
「おや、ネスカ、今日はお前が買出し当番かい。」
「そうなの。そういえば今日はなんだか町が浮足立ってるわね。」
「なんかね、ハグの日らしいよ?
わたしも常連のおっさん爺さん何人かに抱きしめられたさ。」
「そうなの?だから男女二人連れが多いのかしら
…
そうだ、私もお世話になってるしおばさんをぎゅっとする!」
「はははっなんだいい歳して。これからも気を付けて仕事するんだよ。」
笑う二人の背後で急にレーヴが立ち上がった。
「アス。もどったのかい。」
「ああ。」
人の波をすり抜けるようにアルが果物屋に近づくと、
レーヴがアルに歩み寄るが3歩ほど手前で立ち止まる。
「触れられてはいないが、やはり
…
匂うか。先に帰るか?」
「ちょっとだから、我慢できる。」
「そうか。」
レーヴの言葉に小さく口元をほころばせた後、アルが娼婦へ向き直った。
「ネスカ、レディシュはもう戻らない。」
「そうか
…
ハグの日
――
…
やっとアイツの屋敷に呼ばれたのね。」
「片道の依頼しか受けなかった。そういう事だろう。」
「みんなに伝えなきゃ。アス教えてくれてありがとう。」
悲しそうに微笑む娼婦を見送り、
ショックを隠せない果物屋の店主から買い物をして
他要るものを買い足して帰路につく。
「ねぇ、アル。ハグの日って?」
「
……
今日街が騒がしい理由が分かった。きになるのか?」
「ハグってぎゅっとすること?」
「そうだな。大切な人を抱きしめる日
…
だそうだが、私には縁遠いものだ。」
「夢でみるれる
…
かな。よく眠れる?」
「安らぐものではあるな。
今夜は相手が多い。帰ったらゆっくり眠るといい。」
「ん。」
* * *
情報屋から得ていた人数よりも警備が多かった。
事はこなしたが、今は警備を撒きながら逃げている。
隣に並んで走っていたはずの相方の姿がない事に気付き、
思わず立ち止まって後ろを振り向くと、
限界か、はたまた怪我でもしたか、ふらりと体制を崩すレーヴが居た。
その斜め上の建物から何本か銃身が覗く。
狙うのは目の前の獲物。
「レーヴ!!」
躊躇いはあったが、身体はすべき行動を瞬時に行っていた。
正面から彼を抱きしめるように抱え、全力で走り出す。
元々彼がいた場所へ鉛玉の雨が降り注ぐ音を聞き、
血の気が引くのを感じる
…
が、周りの気配も少なくなり、このままなら何とか追っ手を撒けそうだ。
「
…
」
腕の中から小さな声が聞こえる。
強張る身体に早く解放してやりたいが、今は安全な場所へ向かうのが先決だ。
路地を縫って走り、追っ手の気配も完全に消えたころ、
建物の陰でレーヴを解放した。
その顔には血の汚れがついている。抱える前には付いていなかったはずだが。
「レーヴ、その血はどうした?」
「アルの
…
だよ。」
顔を歪ませるレーヴの言葉に、自分の身体を見ると、胸に2本の血の筋が流れていた。
急に抱えたからとっさに刃物で防御したのだろう。
血は出ているし少々深いようだが、医者に掛からなければいけないほどではない。
「慣れていないのに悪かった。」
何故深くもない傷に衝撃をおぼえるのか。
「嫌だったろう
…
すまない」
分からずそのままレーヴを置いて足は勝手に歩き出す。
「今日はこのまま解散だ」
振り返らず、自分の塒を目指した。
――
あの男に呼ばれるのをまってるの
――
呼ばれたら、優しく男を抱きしめて刺し殺すの
――
男は私を抱きしめて絞め殺すの
――
随分前に二人で決めたことなの
――
あの男は覚えていないかもしれないけれど
――
素敵でしょう?
脳裏にはもう会えない女が酒場で歌う様に紡いでいた言葉がぐるぐると廻っていた。
塒で傷の簡単な手当てをしていると、
窓からレーヴがゆっくり入ってきた。
「アル
…
」
「今日は自分の塒で寝た方がいい。
まだ匂いが残っているだろう。うまく眠れないぞ。」
なんとなくまっすぐレーヴを見ることができず、
手元の道具を見るふりをする。
「傷
…
ごめん
…
」
「気にするな。私が自分でしたことだ。お前が悪い事は何もない」
「
…
今日もここで夢を見たい」
「見れないかもしれないぞ?」
「だいじょうぶ。」
「随分な自信だな。」
アルが微かに笑うと、レーヴは安心したようにベッドへ座り込んだ。
だがそのままベッドへ身体を預けることはせず、アルを見つめている。
「眠らないのか?」
「んー
…
。アルを待ってる。」
「今日はまだ匂いが
……
」
「だいじょうぶ。だから、眠ろう?」
なんという事のない彼の言葉になぜかすっと体が軽くなった。
手当も切がついたので、そのままベッドへ歩み寄り、
レーヴが移動して空けてくれた空間に潜り込んだ。
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