魍魅 魎
2015-07-23 02:03:15
2048文字
Public 創作
 

アル・シャインが住む街

紹介SS
本人殆ど話してないです。
詳しくはキャラ設定にて

その男は音もなく頭上より襲い掛かり
獲物の首を引き裂いて去っていく
残るのは崩れ落ちる獲物と広がる血だまりである。

 * * * * * * * *

陽が天頂に差し掛かる頃、
郊外の寂れたアパートの玄関フロアで、女主人と青年が話していた。
カウンターの内側で書類に目を落とす女主人に対し、
青年がカウンターに乗り出すようにして話しかけている。

「屋根裏の部屋空いてるんだろ?住ませてくれよ。
 窓が大きくって屋根裏だけど部屋の中明るそうだし、家賃少し高くしてもいいからさ!!」
「断る」

こんなやり取りが何度も繰り返されているのである。
女主人はもう青年の方すら向かない。

「こんなボロアパートに住みたい変わり者が来たのに追い返すっていうのかよ?」
「ボロで悪かったね!さっさと帰んな。餓鬼に用はないよ。」

その時、アパートの玄関が開かれた。
差し込む陽ざしに来訪者の影が室内に伸びる。
細い影が浸食するように室内へ入り込む。

入ってきた男は細身長身、ヘッドギアをつけ、
ぎょろっとした大きな目はその下の隈の所為でより大きく見え、
右目の下から口を縦断する縫い跡がある。
細い腕に大きく重量の有りそうな荷物を下げ、静かにてカウンターの前へ立った。
自分に重なった男の影に女主人が男を見上げる。

……借りるぞ。」
「今回はいつまでだい?」
「ふた月」
「延びる時は教えとくれ。」

手を伸ばし、女主人の背後に掛かっている幾つかの空き室の鍵の中から
天井裏の部屋の鍵を掴むと、そのままカウンター脇にある階段へ足を向けた。

「な、なんだよお前、そこは俺が借りるんだ」

空気に呑まれていた青年が、我に返ったように階段を上ろうとした男の腕を掴んだ。
足を止めたものの、男は青年へ振り向きもしない。

「おいっ、無視すんなよ!――っ!!」

青年が腕をひいたと同時に、男が青年に詰め寄った。
無言で頭の上から見下ろされる状況になり、青年が息をのむ。

「揉め事は困るんだけどね!!」

女主人の大きな声がフロアに響くと、男は青年の掴んだ手を振り払い階段を上って行った。




男の足音が遠ざかった頃、青年が倒れるようにカウンターへもたれかかった。

「あ、アイツなんなんだよ」
「知らない方がいいこともあるのさ。」

青年が体勢を整えようとカウンターへ手をかけると、
カウンターに自分が訪れた時にはなかった物を見つけた。

「鳥の羽?」

手のひらより大きな羽が一枚カウンターの上におかれていた。

「ああ、それかい。あれ目当ての客に、ここにいることを知らせるもんだよ。
わかったろう?あの部屋はあれ用の部屋なのさ。」
「!!、まさかアイツはA
「しぃっ。言わない方がいい。早く帰りな。」

女主人が青年を睨んで諭すが、彼の目は見開かれ

――すげぇ!本っ当に居るなんてよ!!」

アパートに響きわたるほど大きな声をだしていた。

「馬鹿が

女主人がため息を吐くのと同時に、青年の横に黒い影が落下した。
その瞬間青年の首から血が迸り、状況を把握できないまま床に崩れ落ちた。

頼むからうちの中ではやるなって、何度も言ってるだろうが!!
 片付けるこっちの身にもなっとくれ。アンタと違ってこっちは一応堅気なんだ。」

微かに飛んできた飛沫を拭って、立ち上がった女主人が興味なさそうに青年を見下ろす先ほどの男をにらむ。
男の手には刃物が握られており、どうやら男が階段の上から青年を襲ったらしい。

「私には関係ない。面倒になる前にさっさと掃除しておけ。」

手のひら程の小袋を女主人の目の前に置く。
緩んだ袋の口から覗くのは金貨だ。

………はぁ。分かった。さっさと部屋へ行きな。」

男が屋根裏部屋へ向かったあと、女主人は青年だったものをどうしたものかを見下ろしていた。



そこにまた来訪者が現れた。
スーツを着ている若者だ。

「よお、ここにASがいるらしいって聞いたんだ。
仕事を頼みたいんだけどよ。取り計らってくれないか?」

玄関フロアには踏み入らず、小声で女主人に話しかける。

「確かに居るが昼間に来るなんて死ぬ気かい?
陽が出てる間はダメだ。日没後に出直しな。」
「急ぎなんだ」

女主人の言葉に、焦ったように若者が玄関フロアに滑り込んできた。

「それと一緒になりたくなければ出直すことだね。なりたいなら案内してやるけど。」
「うわっ」

指さす場所を見て、若者が目を見開く。

「それを処分してくれるなら、今夜優先で引き合わせてやってもいいけど?」
「わ、分かった。仲間を呼んでくる、ちょっと待っててくれ」

ばたばたと入ってきたばかりの玄関から若者が外へ飛び出していく。
すぐに彼の仲間が来てこれを処分してくれるだろう。

「(はあ、今頃呑気に昼寝してんだろうねぇ。)」

念のため玄関のカギをかけながら、女主人は深く息を吐いた。