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魍魅 魎
2015-07-05 02:04:09
3078文字
Public
pkmn
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小話>【pkmn】冷たい手 / ズミガン
※義手義足
ズミが振られるところから始まります。
「
…
其方の気持ちには、応えられぬ」
「ーーこれ以上、困らせないでくれ」
瞼を閉じれば浮かぶ彼の悲しそうな顔に、思わずかぶりを振った。
ズミが想いを寄せていた相手ーーガンピに気持ちを伝え、振られてからもう1ヶ月が過ぎようとしていた。
想いを自覚してから人付き合いの不器用なズミなりにあの手この手を使い相手との距離を縮めていった。
多忙なチャンピオンにすら「最近2人仲が良くなったのね」と言ってもらえる程に。
それはただ単に同僚としての距離が縮まったに過ぎなかったかもしれないが
…
。
あの日、ズミの告白を受け入れられないと言ったガンピは、彼には珍しく相手の顔を見て言葉を発しなかった。
ズミへの配慮かもしれないが、どこか言葉を発している本人が傷ついている様に映り、
引っかかる感じが彼への想いと同じくずっと残っていた。
「はぁ
…
」
リーグ内の休息用の部屋に設置されたソファーに腰を下ろして、ズミは深いため息をついた。
陽はすでに落ち、窓の外は暗くなり星が瞬いている。
水門の間からここへ来るまでに誰にも会わず、各所明かりも消えていた事を思うと
リーグにはもうズミしかいないのだろう。
ズミのため息の原因は告白する前も振られた後もガンピだった。
彼のズミへの態度が告白以前と変わりがなく、距離が近いままなのだ。
わかり易く距離を置かれれば同僚の女性達に詮索されるのは想像に難くない。
そういう意味では助かっているがーー
「(辛い
…
)」
挑戦者が多かった訳ではないが、どうも今日は疲れ果てている。
明日リーグが休みな事もあり、ズミはこのままソファーで寝てしまおうと横になった。
何かに触れられている
前髪に触れられる撫でられる感触が心地よい。
まどろみの中その相手はズミの一番そうして欲しい相手の姿となる。
彼は優しく微笑みながら頬に触れ、額へ軽く口づけをし、そして唇へ、
小さく愛していると呟く声が聞こえ
……
夢はなんて残酷なのだろうと思う反面、夢ならばと両腕を用いて相手を抱きしめ閉じ込める。
纏う甲冑とは正反対に、想像より柔らかく気持ち良い唇に自分の唇を何度も何度も重ねる。
深く、もっと深く
――
ガシャンっ
「!??」
衝撃にはっとして体を起こす。
「はぁっ
…
はぁ
……
」
はっきりと覚醒したズミの目の前に居たのは、尻餅をつき、口元をおさえ顔を真っ赤にしたガンピだった。
寝ているズミを突き飛ばし、自分がその勢いのまま後ろへ倒れたようだ。
「ガンピさん
…
?」
先ほどまでの微睡を思い返し、自分の行いを詫びるよりも、何より確認しなければいけないことがある。
「ガンピさん、わたしの髪をなでていましたか!?その後口付けましたよね!!?」
「いや、それはきっとゆ
―
「誤魔化さないでください!!
…
事実を聞いているのです。」
「
―――
……
すまぬ。」
息を飲んだ後、申し訳なさそうに視線をそらして答えるガンピに、ズミの口から堰を切ったように感情があふれだした。
「なぜ
……
何故!?
あの時応えられないと言ったではないですか。
せめてリーグで一緒に居られるだけでも良いのだと、
どれだけ私が気持ちの整理に苦心していると思っているのです?
それを、こんなーー
…
酷い。
そんなに私が嫌いですか?嫌がらせでなければこんな事をする必要ないでしょう!?
私が何をしたというのですか!?」
ソファから立ち上がって叫ぶズミをなだめる様、
ガンピも立ち上がり向かい合う。
「お、落ち着いてくれズミ殿!我が悪いのだ。
気がすむなら殴ってくれても構わぬ。
……
我も、ズミ殿を
…
好いておる。
だから気持ちを伝えられた時は、とても、とても嬉しかったのだ。
だが応える訳にはゆかぬのだ。」
「ならば理由を、教えていただけないでしょうか」
「それはーー」
「お互いに同じ気持ちなのに結ばれないなんて、意味がわかりません!!
まだそういう方面へ理解もその気もないと拒絶された方がましですよ。
私を心労で殺す気ですか。年齢差なんて関係ない、同性であることも関係がないともお伝えしているのにっ!!」
「
………
明日から我への態度を変えないでいただけるなら、理由をお伝えするが
…
。」
「大丈夫です。聞かせてください。これでは何事にも手がつかない」
ズミの言葉を聞き、深く息を吐くとガンピは左手の篭手を外し床に下ろすと、肘より少し上辺りを触りーー
「驚いてくれるな、と言うほうが無理があるだろう
……
」
ずるっ
……
袖から引き抜かれる左手に釘付けになる
「左足も膝より下は作り物である。」
右手に掴まれた左手は接続部分は鋼色が覗くものの、他の皮膚の部分などは作り物とは思えなかった。
「何が
…
」
「若い頃の無茶ゆえ、詮索は控えて頂きたい」
外された左手と床を踏む左足を交互に見ながら、思わず呟いたズミの言葉に
ガンピは静かに首を振った。
「これが理由ですか」
「我とズミ殿との年齢差や、我のこの様な状況を考えれば、
其方の
…
その
…
あらゆる要求に応えられないだろうことは明白だ。
それに若い其方はきっと満足できぬだろう。
衰えるばかりの体で迷惑をかけずに済むとは思えぬからな。」
「
…………
」
「五体満足な、尚且つ其方と釣り合う素晴らしい相手は他におる。だから」
「
…
ってすぎる」
「ズミ殿?」
「勝手過ぎます!!!
…
確かに義手義足に驚きはしましたが、何よりそれをわたしが受け入れられないだろうと
…
、
自分の欲求優先と思われていたことに腹が立ちますっ!
私はそんなに自分勝手で頼りないと思われているのですね?!」
「いや、そんな」
「そんな事有りますっ!」
叫ぶ勢いのまま、ズミはガンピの両腕をぐっと掴んだ。
「確かにわたしも自信はありません。女性との付き合いも長い期間続いた事無いですし。
でも、こんなに振り向かせようと試行錯誤したのは料理以外ではじめてなんですよ。
料理の事しか考えてないこのズミがですよ!?」
「
――
まさか自覚があったとは
…
」
「再三相手にそれを理由に離れられていれば気づきもしましょう!!」
息を切らすズミが、乱れた息を整え様と首をたれる。
「わたしに機会を与えては頂けないのでしょうか
…
?」
「
…
失うのが恐ろしいのだ。」
「それはわたしだって同じですよ?」
「そう
…
であるな。」
「離れぬように、どちらか一方ではなくお互い歩み寄り支え合いうものだとザクロに教えて貰いましたし、
どこかで読んだ本にもその様な事が書いてありました。」
顔を上げたズミは、先ほどまでの激しさとは打って変わって、
静かな真剣な目でガンピを見つめる。
「改めて聞かせてください。
至らない部分は多いと思います、それでもわたしは貴方の隣に居たい。
どうか、応えては頂けませんか?」
「後悔してほしくないのだ。」
「するとすれば離れることができなくなったときでしょう。」
「本当に良いのか?」
「一度振られた相手が貴方の事情を理解した上で再度告白しているというのに、まだ聞きますか。」
「すまぬ
…
」
「謝らなくとも良いのです。
ガンピさん、先ほどの質問の答えをいただけますか?」
「我も、其方とともにありたい」
真っ赤にして消えそうな声で贈られた答えは、
ズミの耳にしっかりと届いていた。
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