ゆい
2023-12-19 14:04:52
547文字
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あなたのいない天国へ

【宗みか】日本に残ったみかちゃんの独り言


「次のステージは斎宮君抜きの、影片君一人にお願いしたいんだ」

独りでは広すぎる控え室でにやけた声のふざけた言葉を聞いた時、咄嗟にだらけた頬を張り飛ばさなかったのは、なかなかの奇跡だったと思う。だけど、致命的に能天気な偉い人の後ろにあんずちゃんの泣きそうな顔を見たらもう何も言えなかった。最近、こんなことばっかりだ。お師さんが海外に行って、おれは死にもの狂いで独りValkyrieの名を守ってきた。遠い空のお師さんに失望されないように。二人を待ちわびるファンの皆に熱望し続けてもらうように。そうやってどんな期待でも受けるようにしていたら、いつしかおれ単体の仕事も増えていた。有り難いことだと、思う。操られて踊る人形のおれではなく、考えて進む人間のおれを評価してくれるのだから。だけど、単数の称賛を聞く度に、心はどうしようもなく白けていた。お師さんは言う。幕が上がれば僕等だけが世界だと。でも、今このステージにはおれ独りしか居ない。おれ独りで作る舞台をおれの神様は果たして世界と呼んでくれるのだろうか。命懸けで誘った世界に神様が居なくとも、それでも人々は惜しみ無い拍手をくれるのだろうか。
今日もまた独りきりの幕が上がる。貴方の居ない天国で、おれは一人では見られない夢を見ている。