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望月 鏡翠
2023-11-23 23:41:06
2041文字
Public
世界観共有
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4、羽乱れ牙相食む
ブツメツフツマ/追食 ひもす
黒い鳥がカァと鳴く。それを不吉の影とするか神の御使とするのかは、人次第だ。
使役するひもすにとっては、対等な相棒であり手足であり目でもある。敵の場所を見つけ、案内する。
目標は七奥不思議、残留祈念。
烏は群れる。寄り集まって騒ぐ習性がある。ここが事件の中心だと一羽が騒げば、それを覗き見に集まってくる。啄むべき餌を探し、哀れな被害者を探す。今宵の哀れな餌は学園長だ。
みつけた場所に、仲間を案内した。
一度は戦略的撤退をした敵の前に再び立つ。
烏だけでは心許ない戦力も、仲間がいれば心強い。勇敢さも正しさも、戦いには求めていない。危うくなれば逃げ、勝てるだけの戦力を探し、何度でも挑めばいい。
大人と違って、まだ何度でも転ぶことができる。
「学園長は、もう二度と立ち上がれないですね」
変わり果てた姿に笑いかける。
ひもすにとっては二度目だが、佐東は初めて目にしたらしい。
「マジかよ」
戸惑うように一歩下がる。そうしなければ全容を視界に入れられないくらいに大きいのだ。驚きに目を見開きながら七億不思議の顔を見る。そこに見知った面影を見つけて、何が起こったのかを理解したのだろう。
あえてそれを口に出して確かめることはしなかった。
「おいおい、こんなの聞いてないぜ。これが騒ぎの原因か」
学園長や判子自体は七奥不思議かしてしまっているため、見えていない人もいる。周囲には何に襲われたのかも何が起こっているのかも理解できていない一般人が、数人逃げ遅れて倒れ伏している。
佐東はそちらを助けに行くつもりだろう。
「判子と目隠し、か。通用するかな」
「俺はこっちの方が好きだよ」
五乃は、目を細めて残留祈念を見つめてる。標本の肆が天井から這い出す。敵を眼前にしてもうその姿を隠す必要はない。龍の威容が七億不思議の前に立ち塞がる。屏風から虎が飛び出すように、瓢箪から駒が出るように。本来ならば起こり得ないことが起こり、幻想が本物になる。
烏が空を覆うほどに集まり、龍がいて、人でないものになった学園長がいる。仮に一般人に見られたとして、白昼夢としか思わないだろう。
五乃は表情に動きがないタイプの人間だと知っていなければ、わからない程度の微細な動きで、唇の端を持ち上げていた。
例えば彼が学園長を標本に加えたらと考えてみる。特殊効果は面白い。だが体は大きいだけで、攻撃力に欠けるだろうか。七億不思議よりは、人に効果を発揮しそうだ。
「学園長、手駒にします?」
標本を作るその方法とやら、実際に見てみたい。これは家のための情報収集ではなく興味だ。
「流石にそんな余裕ないんじゃない?」
本体の周りは流石に判子が多い。
「お互い怪我しないように頑張りましょうね」
冗談めかして軽く手を振る。
「俺は怪我人の救助に行くけどいい?」
「私はお二人のフォローということで、頑張らせていただきまーす」
カラスたちを統率し、攻撃体制を整える。
攻撃の要となる龍の動きに合わせる。
残留祈念は、目を塞がれているから視線から誰を狙っているのか読み取ることは難しい。攻撃を回避するのか、どれくらいの速さで動くのかも、まだわかっていなかった。
それよりもわかりやすいのは判子の方だ。人を狙ってくる。押されると、精神に異常を来たすということがわかっているが、打撃で怪我をしてる人もいるらしい。
やはり、あれを潰さないと標本はともかく人間が上手く動けない。
龍が体を弓のようにしならせ、飛びかかる。烏が周りを渦巻く波と化して、同じく殺到した。周囲の判子を叩き落とす。
その間に佐東と倒れている人の回収に走った。
「あんまり体力ないから、運ぶのはやってくださいね」
助け起こして脈を確かめる。意識がないだけだ。死んでいたら七億不思議化を防ぐためにとどめを刺さなければいけない。佐東が躊躇いなくそれができる人柄とも思えないし、意識がない相手では能力の相性も悪い。五乃は残留祈念本体と戦ってる。となれば、そのもしもに備えるのはひもすの役割だ。
視界に暗く影が差す。
肆が龍の牙を剥き出しにして、襲いかかる。
判子がいくつか立ち塞がったが、烏が先回りして叩き落とした。牙に巻き込まれないように、その立ち回りには最新の注意が必要で意識を奪われる。動きを止めたひもすに判子が迫る。
体に接触する寸前で、ぼろぼろに崩れ落ちる。
「判子が人を褒めたがってるタイプでよかったよ。俺の顔の良さも認めてくれているみたい」
佐東がウインクをした。
ついに龍の牙が、七億不思議に届く。手の枷が牙を阻むが、押さえつけ地面に引きずり倒した。
異形となった学園長の巨大な頭部が目の前に来る。キスでもするときでなけれけこんな至近距離で人の顔仔細に眺める事はない。周囲の判子は佐東が払ってくれた。
間合いだ。
「雪、行ける?」
返事の代わりに羽ばたき、攻撃姿勢に入った。
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