望月 鏡翠
2022-01-04 17:16:31
1226文字
Public 日課
 

#498 これからのことと今日の討伐2

FF14創作/#毎日最低800文字のSSを書く

 人里の近くまでモンスターが降りてきて、農作物を荒らしている。少し数を減らして欲しいというのが依頼の内容だ。小さな村だ。食糧の蓄えにゆとりがあるわけではないし、数少ない交易品である。そこにいけば餌があると味を占め、数を増やしてやってくるようになる前に、人は恐るべき生き物だと教え込まねばならない。
 依頼が終わったら畑に獣避けを施す方法についても教えてやろう。
 様々な場所で様々な依頼をこなし、依頼者の何人かは獣害に苦しむ農家の人であることも少なくなかった。むしろ危険度Sのモブを狩りに行くよりも農家のお使いをこなす方が、安全で手軽な初心者むきの依頼である。だから長く冒険者をやっている内に、その手の知識もついてくるのだ。同じ冒険者の中には自分の家を持って庭造りに勤しんだり、チョコボの餌をこだわって手ずから育てたりしている人間もいるくらいである。
 ともあれ今は討伐が先だ。荒らされた畑から痕跡を辿る。
 地面は赤茶けていて農作物を育てるのに適した土地であるとは思えない。むしろ畑を荒らしに来たようなモンスターを討伐して肉や毛皮、角などを商いした方が生活は安定するのではないだろうかとも思うが、それは部外者が口を出すことではない。
 見たところ村には怪我人が多く、狩猟に人手を裂く余力がないのかもしれない。
「だいぶ街から離れましたね」
 地面を這うようにして痕跡を辿るティカの背中をケイムヴォルクが守っている。確かにずいぶんと遠くまで来た。縄張りの範囲から考えても、そろそろもう少しはっきりとした群れの痕跡を見つけることができても良い頃合いだ。
「違和感がある。もう少し進んで見つからなければ、一度休んで状況を整理しよう」
 首の後ろがザワザワする。こういう感覚があるときは、大抵悪いことが起こる。一度足を止めて冷静になるべきだ。
「そうですね」
 ケイムヴォルクが頷く。だが引き換えすには二人はすでに踏み込み過ぎていた。
 風向きが変わった瞬間に濃い血の匂いを感じ、ティカは反射で武器を手に取った。ケイムヴォルクもティカの異変を感じ取って構える。
 血と腐敗臭。そして獣の臭いがする。人里から遠いのに土埃の立つ地面は不自然に踏み固められている。
 獣の足捌きには無駄がないから、獣道は大抵それを残した獣よりも細く見えにくくなっている。人が歩ける太さに至るほどの道を残しているのなら、その体躯は人よりも大きい。
 じりじりと慎重にすすむごとに、血の臭いが濃くなる。すぐにその正体を見かけることができた。腸を食い荒らされた獣が倒れている。後で食べるつもりなのか、それとも一番甘い場所だけ食べて後は捨てたのか、幸いにしてそれを残した張本人の姿は近くにない。肉を啄みに来ていた鳥が人の姿に驚いて飛び立ったくらいである。
「どうやら、畑を荒らした獣というわけではないらしい」
 ティカは首筋を伝う汗を拭った。この縄張りの主は間違いなく、肉食の獣だ。