望月 鏡翠
2022-01-03 21:24:42
886文字
Public 日課
 

#497 これからのことと今日の討伐

FF14創作/#毎日最低800文字のSSを書く

 癒し手とはいえケイムヴォルクにも十分に戦う力はあり、戦場において遅れを取ることはない。それでも討伐任務のときは二人で組んで赴く。お互いの安全のためだし、役割分担をすれば消耗を防ぐことができる。しかしそれは体面を整えるための尤もらしい理由で、実際はケイムヴォルクと共にいたいからだ。
 ティカが振るう剣は常に感情が動かしている。
 おそらく真っ当な人間にとって、冒険者というのは終生身を投じていられるような生業ではない。冒険者のまま人生を終えることになった人間はたくさんいるが、それらは不幸な事故か実力からなる必然によるものだ。危険が伴う冒険者の仕事に身を投じ続けようと思ったら、肉体も判断力も常に鋭く保っておく必要がある。
 だから老いを感じ始めたら引退をして、それまでに培ったコネや貯蓄を元手にして商売を始めるのが普通だ。日頃世話になっているギルドの人間や酒場のマスターに元冒険者が多いというのはつまりそういうことだ。手っ取り早く稼ぐため、自分の実力を試すため、夢を叶えるための通過点として冒険者を選んでいる。冒険それ自体を目的として、戦いに心を踊らせているような人間は、この業界ではちらほら見るが世界の中ではおおよそマイノリティだ。
 頭がイカれている。
 大きな戦いに片が付き、自由な時間を与えられたティカは、時折これからのことを考える。
 ティカの辿りつくべき場所はどこだろう。
 世界を知りたいと思って故郷を出た。戦うことに向いているから剣を手にした。戦いたくないと思っている誰かが戦わなくてもいい世界が来て欲しいと願っている。だが実際にティカを戦場に駆り立てて来たのは、そんな大義や理想のためではなくいつも目の前で助けを求めてくる誰かのためであり自分のために戦ってくれた友のためであり、仲間のためだった。
 目の前で誰かが助けてと言ったときに、それは理想に敵うものではないからと振り払うことなどできない。
 たぶん、また誰かが助けてと言ったらティカはその手を取るだろうし、今はただケイムヴォルクという冒険者の隣にいるにふさわしい自分であり続けたいのだ。