微睡から目を覚ます。首元に乗っていた猫は二度寝から起きる頃にはいなくなっていたが、代わりにケイムヴォルクの姿もベッドの中から消えている。
「おはようございます」
彼は、コーヒーを飲みながら読書をしていた。その膝の上で子猫が、野生を忘れた格好で伸びている。マグカップを持っていないとき、ケイムヴォルクの手は子猫を優しく撫でていた。
ティカの首の上よりも広いから伸び伸びとしている。
「おはようケイム」
「ご飯、ありますよ。ティカは寝坊助ですね。もうお昼ですよ」
用意した朝食を温め直しにいくため、ケイムヴォルクは腰を浮かしかけた。だが、子猫が滑り落ちそうになったので中途半端な姿勢で止まる。すやすやと寝息を立てていた子猫はそれで目を覚ましてしまった。下されようとしていることを察知して、ズボンの布地に爪を立てて移動を拒否する。みぃみぃと哀れっぽい声を上げられると、優しいケイムヴォルクはそれ以上引っ張れない。
「夜行性なだけだ」
ティカは自分でキッチンにいき、朝食とコーヒーを入れて彼と同じテーブルについた。既に作ってくれたものを温め直すだけだ。大した労力ではない。だが、ケイムヴォルクを子猫にとられてしまったような気持ちになる。
「そこは、私の居場所なんだからな」
断固動かないという意思を全力で示す子猫を突く。
「ティカも乗りますか? 片膝空いてますよ」
「平気だ」
「もしかして、やきもち妬いてます?」
そうなのかもしれない。ケイムヴォルクと出会った頃や、彼と愛し合う関係になったばかりの頃は、彼の興味が他の人に移っていても平気だったし、彼が誰と一緒にいても心を乱されることなどなかった。自分が彼を愛しているという事実だけがはっきりとしていればいいし、それが揺るがないのならば他は何もいらないと思っていた。だがいつからか彼の感情が欲しいと思うようになってしまった。彼からの愛情を知り、大切にされていると自覚する毎に、その気持ちは増していったように思う。
「少しだけ」
人を愛するという気持ちは、思ったよりも難しい。ケイムヴォルクはティカを手招いて膝の上に載せた。
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