リムサロミンサの街はいつも混み合っている。ティカは人混みを避け、エーテライトから離れたところで待ち合わせをしていた。ルガディンが多いこの街ではケイムヴォルクでさえ中背の部類に入るから、見つけてもらうのも見つけるのも難儀するのだ。やがて立ち並ぶ店には目もくれずに真っ直ぐにこちらに近づいてくるケイムヴォルクの姿を目に留めた。
「ケイム、おかえ……むぐ」
いつもそうしているように両手を広げて迎え入れようとしたティカは、そのまま抱きしめられて彼の胸板に顔を埋めた。普段なら挨拶代わりのハグで離れていくのだが、いつまで待っても両腕はティカの体をしっかりと捕まえたままだった。
「どうしたんだ?」
返事の代わりに頭の上でケイムヴォルクが鼻をすする気配があった。ぱたぱたと髪の毛の上に涙の滴が落ちてくる。泣いているのか。今日の依頼で何か嫌なことでもあったのか、それとも心ない人間にひどい言葉でも投げかけられたのか。
いずれにせよ、今必要なものは言葉ではなかった。ティカは問いかけるのを止めて、両手でそっとケイムヴォルクの体を撫でた。背を撫でたいのに、手が届くのはせいぜい腹や脇のあたりまでだ。彼を抱きしめてやることができない己の矮躯が時折ひどく疎ましい。
ケイムヴォルクに抱きしめてもらったときに感じる安心感を彼に与えてやることができない。
「ケイム、顔を見せてくれ」
頭の上の方で首を横に振る気配がした。
「君の顔が見えないと寂しいんだ」
ややあってそろそろとケイムヴォルクはティカを解放したので、ようやく顔を見ることができるようになった。声も立てず静かに両の目からこぼした涙は顎の先で一つになり、見上げるティカの鼻先に落ちた。
次の涙が顎の先に集まってきている。滴り落ちて砕けてしまう前にティカは舌先で掬い取った。ケイムヴォルクが驚いたように目を瞬き、その拍子にまた涙がこぼれるので舐める。顎の先から少しずつ涙の道を辿っていくと、最後に瞳が待っている。
「涙は、止まったみたいだな」
ティカはケイムヴォルクの頭を撫でて、赤く泣きはらした目元にキスをした。
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