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望月 鏡翠
2021-12-29 21:40:52
1053文字
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日課
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#492 人質の価値
FF14創作/#毎日最低800文字のSSを書く
「動くなよ」
その声は緊張していて、怯えていた。だからこそ水がグラスの縁から溢れるように少しのことで一線を越えてしまいそうな危うさを孕んでいた。ティカは彼に、全てが計画通りに進んでいると思わせて安心してもらうために、武器から手を離して両手を頭の後ろにやった。
ぐ、と背中に突きつけられたのはナイフの切先で、皮膚に疼痛があってうっすらと血が滲んだ気配があった。
「お前の飼い主は預かってる」
ティカの飼い主と呼ばれるような人物に、一人しか心当たりがなかった。ケイムヴォルク・ステールネブシン。魂を分け合った半身。何よりも大切で愛しい相手。預かっているというのがどういう状態を指しているのかはわからないが、疑うことを知らない彼が人の悪意に晒されているのは看過できない。
「大事なんだろ、あいつのことが。大人しくしていろよ」
言われずともティカに抵抗の意思はない。縄で後ろ手に縛り上げられる。ご丁寧に足も括り、口に布を詰め込まれ、ティカは樽か何かのように小脇に抱えられてて、彼らのアジトにつれさられた。願ってもいないことだ。そこにケイムヴォルクが捕われているのなら、その無事をこの目で確認しなければいけない。
「ケイムは、どこだ?」
男は捕らえたケイムヴォルクが人質として機能していることに安心したようだった。多少引きつっているが笑みを浮かべる余裕もでてきたらしかった。
「あいつが今どうなっているか知りたいか? お前に関係があることだといったら疑いもせずに慌てて飛んできたぞ」
「君に教えられずとも、あの子のことは私が一番よくわかっている」
ケイムヴォルクが捕まったと聞いたとき、心配だった。彼が傷つく様は見たくないし、どこにいるのかわからないのは不安だ。在所を確かめたいと思ったから、捕まって見せた。だがその身に万が一のことがあるなどとは、欠片も心配していなかった。ティカを捕まえた男の動作一つ、戒め方一つとっても、素人であるのはわかりきっていたからだ。
「私たちは愛し合っていて、互いが互いを何よりも大切に思っている。だからあの子を捕まえれば、どうにかなると考えたんだな?」
それは正しい。ティカはケイムヴォルクの身の安全が自身の命よりも優先する。
「浅知恵だ」
彼はティカの旅路に連れ添ったのだ。ともに困難を超えてきた。それが何を意味するのか、彼らはわかっていない。人質をとらなければティカを捕まえられないような連中に、彼を押さえておけるはずがない。
ティカはにっこりと微笑んだ。
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