昼寝から覚めたばかりで寝ぼけていたティカは、お腹のなる音で完全に目が覚めたようだった。先ほど落ちかけた屋根から下を見下ろし、そこにカモメが咥えて飛んで行ったハムや、鳩が突き回しているパンを見つけた。
「私のサンドイッチが」
耳がへしょと下を向く。
「おれのお弁当、たべますか?」
「いいのか?」
ピンと耳が立ち上がる。よく体を動かすからかティカは会うたびにお腹を空かせている。だからケイムヴォルクは少し多めにお昼ご飯を用意するようにしていた。
「ケイムの作る食事は、美味しいから好きだ」
口を大きく開けてかぶりつく姿を見ていると、作ったケイムヴォルクの方が嬉しくなってしまう。今日はエビとアリゲーターペアをマヨネーズであえて挟んだサンドイッチだ。
ティカも調理師を初めて長いが、魚介類の扱いはいまだに海育ちのケイムヴォルクの方が得意だ。ティカは虫とは違うと頭では理解しているものの、いまだにエビやカニといった甲殻類の類が生きた状態で市場に並んでいるのをみると、警戒するような様子をみせる。
それでもリムサロミンサで暮らすうちに味には馴染んだようで、ぷりぷりとしたエビの食感を楽しんで頬張っていた。
「レシピ、入りますか? そしたらティカもご飯につくれますし」
ティカはサンドイッチを食べる手を止めないまま首を傾げた。少し悩み口の中にあるものをごくりと飲み込んでから首を横に振った。
「いや、いい。私は多分、君の作ってくれる食事が好きなんだ。一人のときは別のものを作る。この街並みを見下ろしながら海の見える場所で食べたこの味を、二人だけのものとしてとっておきたい。一人で食べたら、きっと味気なく感じる」
「うん。そうですね。食べたくなったら、またおれを呼んでください」
「冒険者になってすぐは、一人で食事をする日々だった。君と会ってからいつもと同じものを食べていてもより美味しく感じられるようになった」
「おれもティカと食べるご飯が一番美味しいです」
ケイムヴォルクは面映い顔をして、ティカの頭を撫でた。
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