望月 鏡翠
2021-12-20 23:28:06
1032文字
Public 日課
 

#482 昼寝スポット

FF14創作/#毎日最低800文字のSSを書く

 ティカの姿が見えない。ケイムヴォルクはしばらく前から、その姿を探していた。ミコッテ族の中でも小柄なティカは人混みに紛れてしまいがちだが、瞳の色が変質してからは近くにいればその気配を感じ取れるようになった。
 近くにいるという感覚はある。少なくとも街から出ていないが、見えないのだ。リンクパールに連絡してみても応答がない。ティカならば連絡したときに出られなかったとしても、手が空いたときに折り返してくれるはずだ。
 もしかしてその身に何か異変が起こったのだろうかと、不安が胸を掠める。
 散々街を歩き回って疲れたケイムヴォルクは、一番ティカの気配が濃いと感じた場所で足を止めた。
「どこにいっちゃったんだろう、ティカ」
 息をついて顔を上げたとき、視線の先に見慣れたものを見つけた。白く、毛先だけに黒く色をつけた短毛の短い尻尾。軒先から短い尻尾だけがたらりと垂れ下がっている。体の方は屋根の上にあるらしい。
「ティカ?」
 呼びかけてみるが反応はない。本当にそれがティカのものか確信がもてないが、ケイムヴォルクは自分の感覚を信じて恐る恐る手を伸ばして触れてみた。短めの被毛はふわふわとしていて暖かい。
「ティカ、ですよね?」
 やはり反応はなかった。周囲を見回すと登れそうな場所を見つけたので、ケイムヴォルクも上に登る。ティカは食べかけのサンドイッチの包みを抱きしめるようにして、日の当たる場所で気持ちが良さそうにすやすやと眠っていた。
「こんなところで寝てたら、危ないですよ」
 足音を立てないようにそっと近づく。頬を撫でると耳が震えた。
「けいむ?」
 呂律の回らない口で名前を呼ぶ。目が覚めたティカは、丸まった体を伸ばして起き上がった。尻尾が屋根の淵から垂れ下がる位置に眠っていた体はその拍子に縁からはみ出し転がり落ちる。
「ティカ!」
 ケイムヴォルクは慌ててその胸ぐらを掴んで引き寄せた。サンドイッチの包みが、ティカの代わりに下に落ち、カモメがまっしぐらに滑空していった。
「目が覚めた」
 抱きすくめられながらティカは呑気にあくびを噛み殺している。
「こんなところで寝てたら、危ないですよティカ」
「ここにいたら、尻尾を掴まれないで済むんだ。人も来ないから財布も盗られない」
「でも屋根の上で寝るのはだめです」
 咎めるつもりでその頬を突いたのだが、尻尾が嬉しそうに左右に揺れていてどうやらケイムヴォルクの心配はちっとも伝わっていないらしかった。