望月 鏡翠
2021-12-18 22:54:19
874文字
Public 日課
 

#481 ふわふわの尻尾

FF14創作/#毎日最低800文字のSSを書く

 ティカは己の耳や尻尾を覆っている被毛が、特段毛並みがいいと思ったことはなかった。白というには薄汚れた色をした短毛種。手触りは万人並でしかない。それも昔の話だ。今のティカは髪の毛も被毛もふわふわしている上に艶めいている。
 ケイムヴォルクに手入れを任せるようになったからだ。毎日欠かさず入念な手入れをしてくれているおかげで、人に自慢できる毛並みになった。それはいいのだが、毛艶がよくなったが故に別の悩みも出てきてしまった。
「ティカ、最近なんだか戻ってきたとき尻尾がぼさぼさしてません?」
 出かけるときはブラシをかけ精油を塗ってもらったときのままの、良い香りがする艶々の毛並みだ。だが一日を終えてケイムヴォルクと合流することは、艶がなくなり毛筋が乱れている。
「子供が掴むんだ」
 広場に座って昼食を取ろうとしているときや、依頼人と通りで話しているとき、通りすがりの子供が尻尾をふいに掴むことがあるのだ。撫でるくらいならばいい。しかし、屋台で売っているおやつを食べたあとのベタベタの手で触ったり、子供特有の遠慮の無さでぎゅっと掴まれたりするせいで、一日を終えるころにはみるも無残な有様になっている。
 目の高さに、いかにも手触りの良さそうな尻尾がふわふわと揺れているから気になってしまうらしい。ティカが小柄であるせいで余計に子供に掴みやすい位置になってしまうらしい。
 子供のやることだ。いちいち腹を立てたりはしない。触りたいのならば、なるべく触らせてやりたいと思う。しかしティカにとって尻尾というのはプライベートな場所なので通りすがりの人に触られてあまりいい気分はしないのだ。なにより食事中だとびっくりする。
「あらぁ、それは困ってしまいますね」
「困っている」
「ちゃんと我慢できて、ティカはえらいですね」
 頭をよしよしと撫でられると、子供扱いされているような気がしてくる。
「我慢はできるが」
 ケイムヴォルクが整えてくれた毛並みが乱されるのが、残念なのだ。どうにか子供もティカもどちらも納得できる形で治らないか、悩みどころだった。