ティカとケイムヴォルクのダルトン家で最後の仕事は、孤児院や元の養い親のところにいって話をつけることだった。最後に挨拶にいくかと尋ねても、ジェストの兄弟は養い親のところに戻るのは嫌だと行った。それで大方養父との関係は想像できる。
「ケイム、もう少し柄の悪い服は持っていないか?」
「ええと、手持ちの服はこれで全部です」
質問の意味も理由もよくわかっていないケイムは持ってきていた服をベッドの上に並べた。肌の露出が少なくフォーマルな服を好むケイムヴォルクに相手を威圧する格好は難しいかもしれない。いつもの服の襟を寛げて生真面目さを減らし、サングラスをかけて護衛役として後ろに立っていてもらうことにした。
「あの、ティカ。ボタン止めちゃだめなんですか?」
「だめだ。眉間に力を入れて怖い顔をしていてくれ」
予想していた通り、養い親は家族という時給を払わなくてもいい労働力が減ることが不服らしかった。そして引き取る相手が金持ちならば、なるべく渋って金を絞り取りたいとも思っている。最初は別れが惜しいだの血は繋がっていなくても大事な息子だなとどいって取り繕っていたが、ティカが何も言わずに男を睨み付けケイムヴォルクがそれに倣って黙りこくっているとすぐに化けの皮が剥がれた。
その男にとって養子は自分を危険にさらしてまで守るものではなかったし、手切金がもらえるならばすぐに売り飛ばせる程度の存在。第一、彼は双子のうちどちらを引き取って来たのかも、よくわかってはいなかったのだ。
だがそれらの話は、これから幸せに暮らしていく兄弟には関わりがないことだ。
ティカは、話し合いはつつがなく終わり、あの男が今後この家に関わることはないとだけ報告した。
かくしてダルトン家には家族が増えた。ジェストと、その兄弟。
広い屋敷には二人に別々の部屋を用意することもできたが、一緒の部屋がいいと彼らがいった。彼らは今度こそ嬉しいことも楽しいことも一緒に分け合えるようになったのだ。ジェストは喋れないふりをするのをやめた。彼の顔には引き取られてきたばかりの頃のような笑顔が戻った。よく喋り笑い、甘える。それがダルトンを何よりも喜ばせた。
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.