望月 鏡翠
2021-12-09 21:09:47
886文字
Public 日課
 

#472 ダルトン家滞在日記9

FF14創作/#毎日最低800文字のSSを書く

 襲いくる獣をいなしたが、まだ周囲の安全確認は十分ではない。ティカは剣を納めないまま、盾を携えた手で子供を助け起こした。
「大丈夫か?」
 間近でよく見ればその顔はやはり屋敷にいたジュストに違いない。向こうもティカが誰であるのか気がついたらしい。
「あ、あなたはお父様の……
「うん、君は」
 リンクパールに通信が幾度も入っている。子供と話をするよりも先にティカはケイムヴォルクに無事を伝えてやることにした。
「ケイムか?」
『あ、ティカ! どこにいるんですか。部屋に戻るって言ったのに』
「少し、その散歩を」
『嘘つかないでください。なんで散歩に武器を持っていくんですか。ランプだっておきっぱなしだし。今どこにいるんですか』
「す、すまない。もう少し早く戻るつもりだったんだ」
『おれが言いたいのは、そういうことじゃないです。どうして何も言わずに一人でいっちゃうんですか』
 ティカは途方に暮れて、盾を携えた手ににじむ血を見る。この上で怪我をしただなんて知られたら、彼がまた悲しい顔をしてしまう。大きな怪我ではないから、こっそりポーションでも飲んでおけばごまかせるだろうか。いや、傷を消しても破れた服と血はごまかせない。
 通信をしている最中、ティカは子供から意識を逸らした。通話以外の場所に向ける警戒も、周囲の獣に対してで子供自体に向けられてはなかった。どうやらそれが悪かったらしい。
 ふと振り返るとジェストの顔をした子供は、夜の暗闇に消えていた。
 牧場を見回しても、見える範囲にはいない。
 一人で探すのは困難だ。そして夜に子供をこれ以上一人でうろつかせるべきではない。
 ティカの判断は早かった。
「すぐにこちらに来てくれ。緊急事態だケイム。それからダルトン氏はそこにいるか?」
 ダルトンに伝えなくてはいけないことがいくつかあった。一つはあの子供を捜索するための人手を用意できるかどうか。そしてもう一つは、屋敷に戻ってきた子供が一体誰なのかということだ。
『また怪我したんじゃないですよね』
「話はあとでしよう」
 ティカは強引に話を切り上げた。