望月 鏡翠
2021-12-09 21:06:29
924文字
Public 日課
 

#471 ダルトン家滞在日記8

FF14創作/#毎日最低800文字のSSを書く

 ティカがその子供を見つけられたのは幸運な偶然だった。部屋から明かりが漏れていたのなら、窓から外を見ている人間を警戒したことだろう。だがティカは夜目が効くムーンキーパーであるがゆえに、明かりをつけていなかった。
 追いかけている内にいくつかのことがわかった。まずその子供はエレゼン族の少年だった。農民たちと同じ簡素で薄汚れた服を着ている。夜道で足元が見えにくい風なのに明かりを持たずに歩いているのは、人に見咎められたくないのだろう。
 付かず離れずの距離を保って少年の後をつけていく。
 どこに帰るのかを突き止めることができれば、調べることが少し減る。
 だが、まだ牧場からさほど離れてはいないというのに、ティカが不穏な気配を感じた。肌にピリピリとする殺気。牧場にいる動物を狙っている肉食獣がこちらに流れてきたのだろうか。羊の方を狙ってくれればいいものを、群れから逸れて孤立する獲物を狙うのは獣の世界のルールであるらしい。
 周囲の気配を探り、やはり同じように物陰に隠れて少年に近づこうとしている獣の姿を見つけた。夜道を歩く人の子供はほど無防備で狩りやすい獣もない。今にも飛びかかろうとしていた。
 なるべく見つかりたくなかったがそうも言っていられない。
 武器を抜く。獣が駆け出し、気配に気づいた少年は迫る獣の顎をみて悲鳴を上げる。
 駆け寄るのは間に合わない。咄嗟の判断でティカは背負っていた盾を投げた。横面を張飛ばされた獣の双眸がティカを捉える。敵の数を確認する。一人で相手どることができない数ではない。
 子供が目を見開いて獣との間に割り入ってきたティカをみた。
 癖でガラ空きの左手で庇ってしまい爪が皮膚を裂く。
(初手で盾を投げたのは、失策だったな)
 落ちた盾の場所を確認し、距離を図る。手にするまでにいなさなければいけない獣は二匹。何とかいけるはずだ。盾を拾ったらすぐに戻り、子供を守れる場所に戻る。それまで彼らの目をしっかりと自分に惹きつけておかねばならない。大袈裟に剣を手の中で弄び、獣たちの警戒を引く。
 勝ち目がないと見れば、逃げるはずだ。
 リンクパールが鳴っているのには気がついていたが、応答をする余裕はなかった。