望月 鏡翠
2021-12-07 18:02:04
930文字
Public 日課
 

#470 ダルトン家滞在日記7

FF14創作/#毎日最低800文字のSSを書く

 一人でいると、夜の暗さに無頓着になりがちだ。カーテンを引くのを忘れた窓から差し込んでくる月明かりはティカに、地図を読むのに十分な視界を与えていた。夕食時を過ぎていれば火が落ちているのは必定で、ランプに火を入れるためにティカは窓辺によってカーテンに手をかけた。
 視界で動くものを追いかけてしまったのは、狩人の習性だ。羊を狙う獣の類かと思って注視したが、それはどうやら人のようだった。小さい背中。柵を超える動きは危なっかしい。
「ジェスト……?」
 この屋敷で子供は一人しかいない。見間違うはずがなかった。庭木の影に駆け込んで、その姿を見失う。明らかに人目を気にしている動きだ。散歩という風情ではない。こんな夜中に出歩くのは感心しない。両親は、いまだ食事の最中で、ジェストは自室で食事をしていると思っているはずだ。
 ここから声をかけるか、せめて下に降りて見つからない距離で追いかけて安全を見守るべきだろうか。
 迷った末に窓を開けたティカは、一度見失ったジェストが隠れた庭木の影から飛び出して家に戻ってくるのをみた。すぐに家に戻るならば気をかけることでもないと気を抜きかけたが、困ったことに物陰から飛び出してきた影はひとつではなかった。
 家に戻る影が一つ。もう一つは、真っ直ぐに牧場の只中の道を走って街の方に帰っていく。
 流石に立ち去る人影の顔貌まではみえないが、大人の慎重ではない。ララフェル族とも手足の長さが違う。子供の背中に見えた。それこそ、ジュストと同じような年頃の子供の背中。
 それはティカの胸に新たな疑問を湧き上がらせたが、同時にダルトン家で起こっている問題について幾つかの答えを示してくれた。明日調べるべき事柄もはっきりした。ケイムヴォルクの協力を得ればうまくやれるだろう。
 だが目下、心配するべきなのは家に戻ったジュストではなく、立ち去っていった子供の方だ。
 屋敷の敷地に潜り込んでいた侵入者について、今の段階ではダルトンに知らせるわけにも行かない。しかし、子供一人で夜道を歩いて帰らせるのは危険だ。
 部屋にティカがいないことで驚くケイムヴォルクには後で謝罪をしよう。
 ティカはため息を吐くと、武器を手にして階下に降りた。