望月 鏡翠
2021-12-06 20:59:05
930文字
Public 日課
 

#469 ダルトン家滞在日記6

FF14創作/#毎日最低800文字のSSを書く

 体に何の異常もないのに声が出なくなったのなら、心の問題の他にもう一つ要因が考えられる。本人が声を出したくないと思っている場合だ。
 それならば、声が出ないのに本人が困っている様子はなくすぐにその状態を受け入れている事態に納得がいく説明ができる。ただ、なぜそんなことをしているのか、という疑問は残る。口を聞かないのなら、他人とのコミュニケーションを拒否しているのかとも思えるが、ジェストは人見知りのそぶりはあるが、家族との交流を拒否はしていない。
「本人ともう少し話をしてみたいが、やはり異変が生じた前後の街にでたときの様子が気になるな」
「二手に分かれましょうか」
「そうだな。ケイムは屋敷に来るのは初めてだから、明日は慣れるためにも家に残ってジェストと交流を深めてみてくれ」
 一ヶ月も前のことだ。目撃者を探すには時間が立ちすぎているタイミングだが、幸いここは日々目まぐるしく事件が起こる都会のど真ん中ではない。どこの誰が結婚しただとか、行商人がきたというようなことがトップニュースになるような長閑な場所だ。
「彼らを引き取った孤児院についてもお伝えしておきましょうか」
「うん、頼む」
 ティカは孤児院の場所を聞くと、地図を確かめるために先に部屋に戻った。エーテライトで飛べる場所にあれば、明日中に調査に向かうつもりなのだろう。
「すみません」
 ティカが食堂を去ったあと、ダルトンは頭を下げた。
「どうしたんです?」
「せっかくお休みだったのにティカさんをとってしまったようで。あの人は依頼をこなすときはあんな風に険しい顔をするんですね。長らく忘れていました」
 依頼がきっかけで知り合った二人だが、それ以降はずっと旅の途中に立ち寄るだけだった。ダルトンにとって長らくティカは、たまにきて尻尾を振りながら羊の世話をしていく若者だったのだろう。
 依頼中のティカは、あらゆることを見逃すまいとする狩人の目をしている。子供の相手をケイムヴォルクに任せたのはその目つきで怖がらせてしまうと思ったからかもしれない。
「すぐに解決しますよ」
 そうすれば、またいつものように羊の世話をして毛刈りを手伝って、あの白い尻尾をふわふわと左右に振ってくれるだろう。