望月 鏡翠
2021-12-04 06:14:48
1016文字
Public 日課
 

#466 ダルトン家滞在日記3

FF14創作/#毎日最低800文字のSSを書く

 ダルトンは頭を下げたあとすぐにメイドの背中に引っ込んでしまったジュストを、ティカたちの前にひっぱり出した。
「こんにちは」
 ケイムヴォルクは小さな子供を怖がらせないように膝をつき、視線を合わせて挨拶をした。だがジュストは、無言のままメイドの背後に隠れてしてしまった。怯えてるようなそぶりを見せた。
「前に話した大切なお客様だ。こちらのミコッテ族がティカ・ア・ジャロウさんだ。隣にいるルガディン族の方が、同行者のケイムヴォルク・ステールネブシンさん。しばらく家に滞在するけど仲良くできるかい?」
 こくこくと頷く。ダルトンをじっと見つめ、テーブルの開いた席を指差した後、自分を指差し首を傾げた。そこに座ったほうがいいのか、そういう疑問を提示したようにみえた。
「お客様にご挨拶できたら、部屋に戻ってもいい。家の中で顔を合わせても驚かないように、顔もしっかりと覚えておくんだぞ」
 また何度も頷く。そして最後にケイムヴォルクとティカのそれぞれに頭を下げたあとに逃げるように部屋から出て行った。
「おれ、怖がられているんでしょうか」
 ケイムヴォルクが不安げな顔をした。
「いえ、あの子は誰に対してもああで……。あの子をどう思いましたか?」
「内気な子ですね」
「声を出さない」
 ダルトンはどちらの言葉にもうなずいた。記憶の中にある彼に相応しくない暗い顔で、息子が去ったあとの扉をじっと見つめている。
「ティカさん、滞在中に少しあの子の様子を見てやってくれませんか。最初は、よく笑う子だったんです。いえ、今でもよく笑うのですが、しばらく前からあの通り、全く声を出さなくなって。医者に見せたのですが、魔法的なものでもないし、病気ではないと。だとすると、心因性のもの……そうとしか考えられなくて」
「それは早計だ」
 一緒に暮らしたわけではないが、ティカの知る限りダルトンという人物は善人だ。子供から声を失うようなストレスの要因になるとは思えなかった。だがそれはあくまで家の外からみた人間の意見でしかない。
「なぜあの子は喋らなくなってしまったのか、私たち家のものではわかりませんでした。しかし、外の人に客観的に見てもらったらわかることがあるかもしれません。お願いできませんか。ただ見守ってくれているだけでもいいんです」
「遊び相手になるくらいなら」
「もちろん、それで構いません」
 おねがいします、とダルトンは深く頭を下げた。