ダルトン家で出てくるお茶は、家庭菜園で取れたハーブで作ったものだ。近況を語らいながらお茶を飲んでいると、ケイムヴォルクが二階から降りてきた。
「改めて、紹介する。彼がケイムヴォルク・ステールネブシンだ」
「当家の主人チェスター・ダルトンです。お手紙で聞いていた印象と随分雰囲気が違ったので驚きました。お会いできて光栄ですよ、ステールネブシンさん」
ケイムヴォルクは少し屈んでダルトンと握手を交わした。ティカにとっては親しんだ相手だが、彼らはお互い初対面だ。表情に緊張が見て取れた。
「お部屋に不自由はありませんか?」
「はい。色々ありがとうございます」
「いえいえ、ティカさんの親しい人と聞いていますから」
「親しい……」
頬を赤らめてケイムヴォルクは口籠った。ティカがケイムヴォルクを手紙の中でなんと紹介したのか気になっているらしかった。心配せずとも誇張も嘘もなく、普段見ている彼の姿を見ている通りに書いて伝えただけだ。ティカが近況を誰かに伝えようと思ったとき、常に冒険を共にしているケイムヴォルクの存在は切って放すことができない。
背中を預けられる頼もしい相棒。柔らかくて可愛らしい。控えめで優しい。美しくて愛しい人。そういう言葉で表現した覚えがある。
「そうだティカさん、私にも家族が増えたんですよ」
「そうなのか?」
ダルトンは結婚していたが、長らく子供に恵まれていなかった。後継という面でもそうだが、純粋に大切な家族が増えたのは喜ばしいことだ。
「この場に招いても構いませんか? 大勢の人がいる場所が苦手なようなのですが、せめてお客様に挨拶できるようになってもらいたいのです」
「まだ早いのではないか?」
ティカが以前にダルトン家を訪れてから、まだ一年も立っていない。そのときは夫妻に子供はいなかったから、まだ言葉も話せない時期なのではないだろうか。
疑問に思ったが、断る理由はない。ダルトン氏が使用人に声を掛け、しばらくあとに応接室の扉がノックされた。
入ってきた子供をみて、ティカだけでなくダルトン家に詳しくないケイムヴォルクにも大体の事情が察せられた。ダルトン夫妻はどちらもミッドランダーだったが、彼らの子供はエレゼン族の特徴を備えていた。それに年齢も十歳かそれより少し幼いくらいだ。血の繋がった親子ではなく、養子を迎えたのだろう。
「ほら、ジュストご挨拶しなさい」
ダルトン家の子供は、メイドの背中に隠れながらティカたちにぺこりと頭を下げた。
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