望月 鏡翠
2021-12-03 05:21:30
949文字
Public 日課
 

#464 ダルトン家滞在日記

FF14創作/#毎日最低800文字のSSを書く

 キャリッジを降りると、チョコボの体臭で紛れていた獣臭さがわかるようになってきた。牧草が風で緑色の海のように揺れる草原に真綿のように白い塊が散らしてある。近づけばその綿の塊は草を食むシープの群れであることがわかる。
 ダルトン家の屋敷は集落から少し距離を置き、周辺を牧草地に囲まれていた。
 遠くからやってくる二人が見えたのか、ドアノッカーを鳴らす前に家の人間に出迎えられた。
「よく来てくださいました」
「ダルトン氏、お久しぶりです」
 ティカは家主自らの出迎えに丁重に頭を下げた。ダルトンとは、冒険者ギルドの依頼を介して知り合った。この辺りの地主だが行商人から初めてこつこつと資金を貯めて土地を買い、成り上がった。貴族ではないからか、一介の冒険者を自ら出迎える気さくさがある。数名抱えている使用人とも、家族のような付き合いをしている。
 旅暮らしだったティカのことも暖かく歓迎してくれて、それ以来この地方にくる度に挨拶のために顔を出している。政治的な問題や戦争、魔物討伐の依頼など殺伐とした日々の中で、家畜の世話や農作の手伝いをすると心が癒える。
 訪問する前に、今回は連れがいることを伝えてあったから屋敷に滞在するために二部屋用意してくれてあった。
「お連れ様はルガディン族だと聞いていたので、大きめのお部屋を用意しておきました」
 内装を確認し、ティカはケイムヴォルクと同じ部屋に荷物を下ろした。
「部屋は一つでいい」
「いえ、どうせ余っている部屋ですから使ってくれて構わないんですよ」
「いや、同じ部屋がいい」
 ダルトンは目をパチパチとさせながら、ティカとケイムヴォルクを見比べた。
「彼と親しいから、同じ部屋に泊まりたい」
 伝わるように言い直すと、納得したように頷き微笑んだ。慌てるケイムヴォルクを残して階下に降り、滞在予定を打ち合わせる。テーブルを囲みお茶を飲んでいると、ダルトンはしみじみとした微笑みを浮かべてティカを見た。
「どうした?」
「こうしていると前にあったときと変わらないように見えるのに、あなたにも家族ができたんですね」
「家族、だろうか」
「そうみえましたよ」
「そうか」
 ティカの答えは淡白だったが、その尻尾は左右にぱたぱたと揺れて喜びを表現していた。