ミコッテにも個人差がある。感情が尾や耳に現れてしまうタイプとある程度自制できるタイプとがいる。ティカ・ア・ジャロウは前者である。表情の変化が分かりにくい分、余計に露骨に見える。
その日、ケイムヴォルクのところに戻ってきたティカは、遠目にみてもわかるほどに落ち込んでいた。耳がぺったりと寝てしまっているし、尻尾は力なく地面に垂れている。それに、今日はしょぼくれているのが顔にも出ていた。
普段ならば出会い頭に抱きついてくるのにそれもなかった。
「てぃ、ティカどうしたんですか?」
頭を優しく撫でると、耳が少しだけ持ち直した。
ケイムヴォルクの記憶が確かなら、今日宿を出るときはティカの後ろ姿は意気揚々としていた。耳も尻尾も上向きで歩くたびにふわふわと左右に揺れていた。
いつもは仕事を受け過ぎてしまうティカのことを心配しているが、今日の依頼はきっと楽しみなものなのだろうと思っていた。うまくいかなかったのだろうか。
「ステーキ」
それだけ呟くとティカの耳はまた下を向いてしまった。重症だ。
「ステーキ?」
「捕まえてきたら食べさせてもらえる予定だったんだ。肉が柔らかくておいしいと」
そういえば今朝のティカは朝食を抜いていた。それだけ楽しみにしていたのだろう。
ティカがなぜこんなにも落胆しているのか、ケイムヴォルクにも理解できた。
「食べられなかったんですか?」
「可愛くて無理だと言われてしまった。飼うのだそうだ」
「あらぁ、それでお腹がすいてるんですね」
「たくさん食べたいから生後日数の割に大きのを選んで捕まえてきたのに……、ステーキくれなかった」
子供の可愛さは種族を問わない。肉にするまでの数日の間でも手元に置いておけば愛着が湧いてしまう気持ちは理解できる。できるがティカは食べ物として捕まえてきた動物は肉として割り切ってしまうことができる。依頼人にはそれができなかったらしい。
「ステーキ」
ティカは名残惜しそうに、ペットにしているモールの子供を見つめた。お腹が切なげにきゅうと音を立てる。この子を食べようと言い出しかねない。
「あ、あの今日おれ、ひんがしの国の料理を習ったんですよ。ティカさん食べますか?」
「食べる!」
ティカの耳と尻尾がようやく元の位置に戻る。起き上がった耳をケイムヴォルクは優しく撫でた。
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