レターモーグリが重たそうにしている。配達士としての仕事になにか進展があったのかと思ったが、そうではなかった。今回は届ける側ではなく届けられる側だ。受け取った荷物と手紙の送り主はケイムヴォルクだった。
思わず耳がピンと上を向き、尻尾が左右に揺れた。
毎日顔を合わせているが、たまにこうしてお互いに手紙を送る。一体何が届いたのだろう。包みは体積があるものの軽い。届いたその場で早速開いてみると、指先に触れたのは手触りのいいファーだった。毛皮と毛糸で作った服が入っている。
お誕生日おめでとうございます。
その一文をみて、今日が自分の誕生日であったことをようやく思い出した。毎年家族が思い出させてくれるまで忘れている。家族がそばにいない今年はケイムヴォルクが思い出させてくれた。
鮮やかな珊瑚の色に染められた布。タグにつけられた製作者の銘はケイムヴォルクになっている。最近ずっとティカに何かを隠していたが、これを作っていたのだ。ティカの手を借りようとしてくれなかったのも、いそいでいた理由もわかった。
胸の奥がぎゅうとする。苦しいのや切ないのとは違う。暖かくてそわそわとしていても経ってもいられなくなるようなこの感情は、きっと愛しさだ。肌触りのいい服に早速、袖を通す。これからの時期にぴったりの暖かさだ。しかも、動きやすい。
ケイムヴォルクが戻ってくるまで我慢できず、そのまま街に出かけた。やがて編み上げた艶やかな黒髪を見つけ、ティカはその背中に抱きついた。
「ぬわ、ティカ?」
「私だ」
振り向いたケイムヴォルクの目が嬉しそうに細められる。
「とても、似合います。ティカ」
「可愛い年下の恋人が作ってくれたんだ。今日は私の誕生日だったらしい」
「忘れてたんですか?」
「毎年、ついうっかり忘れてしまう」
「じゃあ、これからはおれがちゃんと思い出させます。誕生日、おめでとうございますティカ」
頬を優しく撫でる手に目を細め、ティカはケイムヴォルクに抱きついた。
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