望月 鏡翠
2021-11-23 18:40:05
906文字
Public 日課
 

#456 半身の影響

FF14創作/#毎日最低800文字のSSを書く

「ほんとのほんとに、平気なんですよね?」
 ケイムヴォルクはこれで何度目かの念押しをした。その後ろで医者が肩を竦める。
「大丈夫だ」
「ティカの大丈夫は信用できないです」
 戦いのあと、瞳の色が変わった。不調はないし、悪い変化ではないとティカは確信をもっていたが、心配性のケイムヴォルクはそれでは納得しなかった。すぐに賢人のもとに引きずっていかれ、そのあと医者にも見せられた。
 彼らの答えは変わらない。自分たちの観測できる範囲で不調や異変は見られず、安定している。どうしても不安なら経過を観察してみるより他ない。それでケイムヴォルクはティカを三日おきに医者のもとに引きずってくるのだ。
 いかなくてもいいとティカが主張したところで、ひょいと抱え上げられて診察室の椅子まで運ばれてしまう。
 医者の方が呆れ顔だが顔を見せてくれるのは嬉しいと、行くたびに独特の味のお茶を振る舞ってくれる。怪我人は数が減り重傷者の療養とリハビリをまつ院内は、忙しいながらも以前よりも穏やかな時間が流れるようになっている。
 瞳の色の変化は、どうやら魂を修復するときにケイムヴォルクのエーテルに影響されたらしい。色を失った左目の色をティカが受け取ったのも、もしかしたら彼と命を分け合った影響かもしれない。
 まだ誰にも言っていないが、実のところ一つだけ前と違っていることがあった。
 ケイムヴォルクの気配が、以前よりも強く感じ取れる。耳を撫でる前にその手が感じ取れるし、近くにいるとなんとなく居場所がわかる。今も、目で見て確かめなくても彼がこちらに優しい目を注いでいるのがわかった。
 たぶん、エーテルを分け合て二人で近づいたからだ。自分の体の場所がみなくてもわかるように、あるいは目の見えない賢人がエーテルで周囲の環境を捉えているように、混ざった魂の分だけうっすらと彼の存在が感じ取れる。
 医者に体調の変化として報告した方がいいのかもしれない。
 だが、まだもう少しだけそれはティカだけの秘密にしておきたい気分だったのだ。
 ケイムヴォルクも同じように、ティカの存在を感じ取ってくれているだろうか。見上げると彼と目があった。