体の変化が一体いつ起こったのか、ティカに自覚はない。少なくとも戦いが終わった直後ではなかったと思う。体調はそのずっと前から常に異常を訴えていたから指標にならない。鏡が手元にあって顔を確かめたわけではないが、あのときティカたちの体の変化を注意深く見守っていた仲間たちが、何も言ってこなかったことからそう推測している。とはいえ、額の怪我の血が流れ込んで瞳の色が見えなかったか、そんな些細なことを指摘しているような状況ではなかっただけだったかもしれない。
ティカ自身がそれに気がついたのは、次の日の朝だ。
夜通し続きそうな宴をケイムヴォルクと二人でそっと抜け出し、自室にこもって思うまま彼に甘えた。
気丈を装っていた。何も不安なことなどないフリをしていた。英雄らしく強くあらねばと思っていたし、その役目を己に被せれば心を置き去りにしてどんな戦場にも赴くことができた。しかしケイムヴォルクを失うかもしれないということが、ずっとティカには恐ろしかったのだ。自分の命が無事であったことより、彼の魂と体が無事であってくれたことの方が嬉しかった。
久しぶりに時間をかけてゆっくりとケイムヴォルクに毛並みを手入れされ、腕に包まれて眠り翌朝目を覚ましてキスをしたとき、彼の目が驚きに見開かれて確かめるように頬に触れまぶたをなぞった。
「ティカ、瞳の色が」
声が震えていたのは、また体に異変が起こったことを悪い方向に考えてしまったからだろう。鏡を覗き込んだティカは、そこによくよく見慣れた星の色をみた。
「きっと悪いものではない」
今すぐにでも医者を探しに飛び出していきそうなケイムヴォルクを、ベッドに引き戻す。
「でも、ティカ……」
「君と同じ色だ」
ケイムヴォルクの右のまぶたに口付けする。根拠などないが、自分の体のことだから、確信ができた。
あのとき、二人だけの約束をした。互いの命を他の誰にも触らせない。ケイムヴォルクが彼で亡くなってしまう前にティカが終わらせる。ティカが変質してしまう前に彼が摘み取ってくれる。
互いが互いの半身であり、お互いのものだ。
そうやって分け合った魂の一欠片が、瞳に宿っただけのこと。
あの日から、ティカの左目はケイムヴォルクと同じ紫色をしている。
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