まだ依頼は終わりではない。本当にモンスターの脅威を払えたかどうか、森を見回る。本来ならばここからは、自警団などの仕事で継続的に状況を確認してもらうのがいいのだが、村の若者が武器を集まった程度の組織しかない現状では、警戒を続けながらうまく付き合って行ってもらうしかない。
統率するモンスターを倒したとはいえ、昨日の今日で森の中に変化はない。ただ個体数の増加に他の原因がなかったのかは調べなければいけない。賢人の手が借りられたら、もっと踏み込んんだ調査ができるのだろうが、今回の件は蛮神とも世界の危機とも関わりがない。
冒険者としての、いつもの依頼だ。
森の中の道を辿り、巨鳥が根城にしていたと思しき場所までたどり着いたが、モンスターの群れは消えていた。習性として夜は同じ場所に戻っていきて眠るから、まだ多少数が密集しているようだが、時間が経つに連れて自然と森の中に散っていくだろう。逃げ出した野生動物もそれに従って元に戻るはずだ。
「問題なさそうだな」
「はい」
森での調査を終えれば、村長に報告して依頼は終わる。
報酬を受け取り、仮屋に戻って荷物をまとめようとすると、そこでマーティンが待ち構えていた。あの日、依頼が終わったら遊べるかもしれないとティカがいった。だから彼は終わったら一番最初に遊びたいと思って、二人について森の中まで来たのだという。危ないことは嫌だという彼は、ただ無邪気だっただけだ。
「ティカ! ごめんなさい、僕のせいで。痛かったよね。もう平気なの」
足に抱きついてきたマーティンの頭を撫でる。冒険者にとっては日常だが、さぞかし怖い思いをしたことだろう。
「大丈夫だ。もう危ないのはいなくなったからな」
頭を撫でる。
「あんなに痛くて怖い思いするのに、なんでティカは冒険なんてするの」
どうして。そんなことは決まっている。
マーティンのような人を守るためだ。武器を持たなくていい誰かが、平穏に暮らせるように。痛いのも怖いのもティカだって嫌だ。しかしそれを叶えるためには誰かが武器を取らなくてはいけない。
迷った末にティカは人差し指を唇の前に立てた。
「秘密だ」
剣を取る理由は剣を手にする人間が、胸のうちに止めておけばいい。
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