望月 鏡翠
2021-11-21 21:21:37
906文字
Public 日課
 

#453 夜更けの尻尾

FF14創作/#毎日最低800文字のSSを書く

 暖かいベッドの中で目が覚めた。寝ぼけた頭で隣で眠るケイムヴォルクの顔を見る。
 戦いの後、どうしてもティカを抱き抱えて帰るというケイムヴォルクに根負けして、腕の中にいるうちに眠ってしまったらしい。眠ったというよりは体力の限界で意識が落ちたか。眠ったと思ってもらえた方が、余計な心配をかけないで済む。
 窓の外はまだ暗かった。妙な時間に眠ったせいだ。着替えた記憶も湯浴みをした記憶もなかったが、傷も返り血も清められ服は寝巻きに変えられていた。
「面倒をかけた」
 まだ眠りの最中にあるケイムヴォルクが目を覚ましてしまわないように、小声でお礼をいう。頬を優しく撫でていると、眠りが浅くなった気配がしたのでそっと腕の中から這い出てベッドに腰かけた。
 サイドチェストには水差しと、軽食の入った籠が置いてある。食べていいだろうか。きっといいはずだ。もくもくとサンドイッチを口に運んでいると、後ろでケイムヴォルクが目を覚ました。
「おはようございます、ティカ」
「ケイム、起こしてしまったか」
「ええと、そうですね。おはようございます」
 困ったようにいうのでベッドを振り返ると、ティカの尻尾がケイムヴォルクの顔の上にあった。ベッドの上に腰かけると、ちょうど尻尾がその場所にくる。嬉しいと無意識に尻尾を振ってしまう習性があるから。食事をしているうちにいい気分になって、顔の上を何度も左右に掃いてしまっていたらしい。
「すまない、起こすつもりはなかったんだ」
 それでもケイムヴォルクが起きて話をしてくれるのが嬉しく、再び尻尾が揺れ始めていた。鼻先をくすぐられた彼がくしゃみをこらえる顔になったので、自分の尻尾を捕まえてベッドに押さえつける。
「ふふ、構いませんよ」
 笑いながら押さえつけた手から尻尾を解放し、毛並みを楽しむ。
「ふわふわですね」
「君が、手入れをしてくれるから」
 相手が子供ならば我慢をするが、尻尾を触られるとき本当に心を許した相手でなければぞわぞわとする。当時は自覚をしていなかったが、ケイムヴォルクに毛並みの手入れを委ねるようになったときからもうすでに、彼は掛け替えがない人だったのだろう。