一号の話は難しかった。僕にもわかる言葉で説明しようとしていたけれど、よくわからなかった。だからわからないことはこっちから聞こうと思って質問攻めにしていたら、うしろからぽんと頭に手を乗せられた。
「あまりケイムをいじめないでくれ」
二号がいる。村長との話が終わって戻って来たんだ。
「ティカ」
一号がほっとした顔で出迎える。家にきた二号は荷物をおろすのも後回しにして、一号に抱きついた。やっぱり親子なのかな。僕はもう恥ずかしいからそういうことはしないけど、家に帰って嬉しくて抱きつくときはあんな感じだ。やっぱり二人は親子なのかもしれない。
「いじめてないよ。ねぇティカは? ティカがここに住むって言ったら、ケイムも残るでしょ?」
「住む?」
二号が耳をぱたと振るわせてよくわからないという顔で首を傾げた。触ってみたいなと思うけど、二号は一号と違って僕と喋るときにしゃがんでくれないから、手が届かない。
「ご両親が心配していた。私が送っていくから、帰るんだ」
一号は物凄く一生懸命頼み込んだら許してくれるけど、二号は大体問答無用だ。仕方がないから続きは明日にしよう。外に出ると、いつの間にか空はもうオレンジ色に染まっていた。
「ティカとケイムがさ、ここで暮らせば旅ぐらしなんてしなくていいでしょって話してたんだ」
「ああ、それでケイムを困らせていたのか」
「困らせてないよ!」
色々聞いていただけだ。
「遠くでやらなくちゃいけないことがあるんだって。だから僕、近くにあることだけやればいいんじゃないって行ったんだ。村の外って危ないんでしょ? 冒険者ってわざわざ危ないところにいくんでしょ? なんで? ここの大人は平和が一番って言ってるよ。ティカは違うの?」
どこか遠くで戦争が起きた。どこかの街に魔物がでた。道に野盗がいる。
そういう話がでるたびに、大人は難しい顔をする。全然楽しくないときの顔。何も説明せずに外に出てはいけませんというときの顔だ。だからみんな遠くになんて行かないで、ここにいればいい。そうしたら僕は寂しくないし、一号と二号は危ないところに行かなくてもいい。
二号は一号みたいに困った顔はしなかった。
「確かに平和が一番だ。だからこそ、旅をしている。君がそう思ってくれるなら、私たちの旅路は歩くに適うものだった」
二号の言葉は一号よりもずっとずっと難しい。でも二号は一号みたいにわかりやすく言い直してくれたりしないから、僕の中にはわからないことがどんどん増えていった。
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