望月 鏡翠
2021-11-08 20:47:25
904文字
Public 日課
 

#441 同じ残り香

FF14創作/#毎日最低800文字のSSを書く

 宿に戻ってから贈り物の包みを開封し、ケイムヴォルクは目を輝かせた。小瓶の蓋を開き鼻先を近づけて匂いを楽しむ。
 海のイメージと書いてあったが生臭い潮ではなくて、海の青さや吹き抜ける風をイメージした爽やかな香りだ。
「これ、ティカが選んだんですか? とってもいい匂いです」
「うん。使ってもらえると、嬉しい」
「もちろんです」
 にこにこと笑いながら、湯浴みに備えて手入れ用品とともにテーブルの上に用意した。ケイムヴォルクに似合うものを選んだが、ずっとそばにいる彼が身に纏うのだから、ティカも好ましいと思えるものをチョイスした。あの香りを纏ったケイムヴォルクと同じベッドに潜り込むのが楽しみだ。
 いつもの習慣で、濡れた髪をケイムヴォルクに任せたティカはふわりと鼻先に爽やかな涼を感じた。
 今日買った香油の匂いだ。
 ティカは思わず、振り返った。
「あ、ティカ。まだ終わってないので」
「違う!」
「違う?」
 頭の上に疑問符をたくさん浮かべているケイムヴォルクの手から、香油を取り上げる。
「これは、ケイムに使って欲しくて買ってきたんだ」
「おれ、ですか? てっきりティカが、使いたいのを渡してくれたのかと」
「君のために、一番似合う香りを選んできたんだ」
 ぐいぐいと腕を引っ張りケイムヴォルクを椅子に座らせる。日頃のお返しとばかりに、髪の毛の手入れを始めた。普段は三つ編みにした上でさらに結い上げているから目立たないが、二人とも髪を解くとかなり長い。丁寧に乾かし香油を塗り込みとやっていると、結構な時間がかかる。
 ついでに頭皮を揉み解してやると、ケイムヴォルクは心地よさそうに目を細めた。
「やっぱりこれ、ティカに使っちゃ駄目ですか?」
「駄目ではないが、私はもらってばかりだ」
「ティカと同じ香りがいいです」
「いつも、同じだろう?」
 同じ宿で同じように湯浴みをして、同じものを食べ寝床すら分け合っている二人は常々同じ香りを纏っている。両者に違いがあるとすれば、髪から薫る香油くらいのものだっただろう。だが、今はそれすらも同じくしている。
 二人は顔を見合わせ、どちらからともなく笑った。