望月 鏡翠
2021-11-06 21:32:34
929文字
Public 日課
 

#439 海沿いの旅9

FF14創作/#毎日最低800文字のSSを書く

 ケイムヴォルクは駆け出して行った女性の行方を気にしていたが、ティカに促されて再び腰を下ろした。
「本当に、毒は入っていないんですよね」
 女性とティカが口にした薬湯の入った鍋をかき混ぜ、念を押す。
「うん。これは正真正銘、ただの不味い薬湯だ。ケイムも飲むか?」
 不味いと言われているのに、差し出されると受け取ってしまうところに彼の性格がよく出ている。恐る恐る口にして、野草の苦味に顔をしかめた。
「どういう、ことなんですか?」
「ここにいる人たちを死に至らしめたのは、この野草だ。この近くに多くはえているのを、さっき見つけた」
 それは極めて毒性が強い野草だが、間違って一株シチューに混入した程度ではキャンプの全員を死に至らしめるほどの威力は発揮しない。焦げ付いた鍋の中身を確認すれば、それがシチューの具材として多量に投入されていたことを確認できる。
 問題は、それが偶発的に起こったことなのか恣意的に行われたことなのかと言うことだ。
 毒草を食べられる野草と間違えていれてしまったのなら、それは事故だ。彼女がシチューを口にしなかったのは、幸運かあるいは普段から男たちにそういう扱いをされていたかのどちらかなのだろう。
 しかし、彼女がそれを毒草だと知っていてあえてシチューを口にするのを避けたというなら話は違ってくる。場合によっては、男たちを殺すためにあえて毒草を入れたという可能性すらでてくる。
 証言はいくらでも偽ることができる。知っているふりを見破るのは簡単だが、知らないふりを見破るのは容易ではない。だからティカはかまをかけたのだ。味の癖が強い薬湯のそばに、シチューに混入していたと思しき毒草を置いておく。
 もしそれが毒だとしっていたのなら、ご覧の通りだ。
 彼女は大量の水で胃を洗うため、水場に駆けていった。もはや知らなかったなどと言う言い訳は通用しない。
 頭を打って気を失っていたのは、演技ではなかった。女性が倒れていた場所の近くには、太い薪が一本落ちていた。仲間や自分の体に異変が起こったのを悟った見張り役が、彼女の仕業だと悟って投擲したのではないだろうか。
「さあ、彼女を捕まえに行こう」
 ティカは縄を手にとり、腰をあげた。