望月 鏡翠
2021-10-29 08:31:01
924文字
Public 日課
 

#430 海沿いの旅2

FF14創作/#毎日最低800文字のSSを書く

 夜営をするときは、交代で見張りを立てる。宵っぱりのティカが先に火の番をしながら周囲の警戒をする。先に眠るケイムヴォルクが毛布に潜り込み横になったのをみて、ティカは彼の隣に移動した。枕の代わりにした荷物を奪うと、代わりに膝を差し込む。体重をかけないように上体を浮かせたケイムヴォルクの肩を押さえて、頭を抱きしめるようにする。恐る恐るといった風に頭の重みが太ももに乗った。
「重くないですか?」
 心配そうな声を出す顔を覗き込む。編み込んだ髪の毛の先が肌を撫で、くすぐったそうな笑い声を零す。
「平気だ」
 頭の重みと体温が心地いい。頬に手をやると、焚き火よりもその温もりが指先をほぐしてくれる。
「いざというときティカが動けないのでは?」
「そのときは、立ち上がって君の頭を落としていく」
「う、やっぱり枕返してください」
「だめだ。早く寝てくれケイム」
 起き上がろうとした額にキスをして押し留める。寝かしつけるように手のひらで毛布の上から叩いていると、しばらくの抵抗のあと穏やかな寝息が聞こえ始めた。寒くはないだろうかと、羽織っていたミコッテサイズの外套を毛布の上から更にその体に被せる。
 海都の夜は砂漠ほどは冷え込まないし、山都ほど過酷な環境ではない。テントを張らずに夜営をしたとしても命に関わるようなことにはならないが、それでも朝方に立ち込める霧などに体を晒したままにしていれば風邪をひいてしまう。夜目が効くティカは明かりを火に頼る必要はなかったが、獣と寒さを避けるために少し火を大きくした。
 薪を投げ込んだ拍子に火の粉が舞い上がり、空に吸い込まれて星々の粒と同化していく。
 その美しい景色をケイムヴォルクと共有したくなったが、彼は眠りに落ちたばかりだ。色の違う瞳に、世界はどんな風に映るのだろう。夜の暗さですら、二人の認識はきっと違う。顔に残る傷跡に、指の背でそっと触れる。閉じた目蓋に隠された焼かれた片目を思う。
 私が側にいたら、彼にこんな傷を負わせはしなかった。そんな風に思うのはきっと傲慢なのだろう。ケイムヴォルクにはケイムヴォルクの人生がある。だが、ティカは許す限り傲慢であり、彼に関わり続けたいとそう思っていた。