西方から東方まで落ち着きなく各国を移動する暮らしをしているティカとケイムヴォルクだが、黒渦団の所属であるため活動の拠点はリムサロミンサになる。久しぶりに海都に戻り黒渦団の中で部下である小隊員たちのところに顔を出す。
街に一晩滞在したあと、二人は陸路で西ラノシア方面にむかった。サハギン族が蛮神召喚の準備を整えていないか動向を探りにいくというのが大義名分だが、実際は人に友好的な蛮族の拠点に顔を出すためだ。融和の道を探る上で多種族と密に連絡を取ることは重要だし、彼らから蛮神召喚の兆候がないか聞き出すこともできる。
飛空挺での移動や船旅あるいは転移魔法を使って済ませることが多くなった旅路で、時間がかかる陸路での移動は、息抜きも兼ねていた。出番が減ると不機嫌になるガーデニアは久しぶりに主人を連れて旅ができるので上機嫌だった。
海沿いに駆け、日が暮れる前に足を泊めて野営の準備をする。夕日を見ながら岬から糸を垂らし、夕飯の食材を集める。釣りの腕前はかつてに比べれば随分上がったが、まだまだケイムヴォルクの方が上だ。そうした食材を使って野営の中で彼が作ってくれる食事は、調理師としての腕を磨いてもなお届かない美味しさがある。それはおそらく海の近くの街で生まれ育った故郷の味なのだろう。
夕食の用意はケイムヴォルクの手伝いに回り、ティカはチョコボの世話や水の用意と行った細々としたことをやることにした。ガーデニアは他のチョコボの餌や人間が食べているものにまで嘴を突っ込もうとする癖があるので、少し離れたところにつなぐ。当人はなぜそんな扱いをされているのか理解していないから、不満げだ。
「ガーデニア、寂しいんじゃないですか?」
盛んに鳴き声をあげるガーデニアを心配して、ケイムヴォルクが鍋から顔をあげる。
「わがまま放題するからダメだ」
ケイムヴォルクが気にかけてくれるというのをよくわかっているらしく、一緒に旅をしていると特に甘えたがる。ダメだぞ、と咎める意図でガーデニアを小突くと遊んでもらっていると勘違いしたのか、羽を震わせて喜んだ。
「怒られてるんだからな?」
念を押しても首を傾げてつぶらな瞳をこちらに向けてくるだけだった。
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