女性を弔ってやれればと思ったが、どうやら男も彼女の遺体が今どこにあるのかは、知らないようだった。話を聞き終わると、ティカは涙を流す男をおいて街に帰った。慰めるべき言葉を見つけられなかったし、余計な口を出さずとも彼はもう自分の生きる道を見つけている。
彼の証言の全てを信じたわけではなかった。遺体があれば別だが、その言葉を確かめる術はない。そして彼に殺されたという女性の証言だって、襲撃者の姿を見たわけではない。もし、ティカが持っている超える力の一端を発揮して彼の過去に触れたのなら、真実を知ることができたかもしれない。しかしエーテル酔いに似たあの感覚は訪れなかった。だから言葉によって探るしかない。
彼女の言葉が真実なら、犯した罪から逃げている彼は罰せられるべきだろう。監視哨で働いているのは、遺体が見つけられるのを恐れて自分で見張っているのかもしれない。
だが彼の言葉が真実なら、少し不器用なだけだった男は助けようとしたその人に恨まれ憎まれて祟り殺されそうになっていたことになる。それはあまりにも報われない。
だから自分の目で判断をするしかない。
ティカにわかるのはもう死んでいた彼女が、人を祟る存在になっていたということ。
そして、彼は監視哨で真面目に勤務していて同僚からの評判も上々だったこと。
人の役に立ち今を生きている限り、ティカはこれ以上彼の過去を掘り返すことはない。そうするべきだと、判断した。
帰り道、依頼人を滅してしまったから今回の件は無報酬であったことを、思い出した。
ケイムヴォルクと別行動をしたときは、二人でその日の出来事を語り合うのが常だった。だが、今回の依頼の話はなんと説明するべきだろう。彼向きの依頼ではないという判断は間違っていなかった。救いようのない女性のことや男のことを、きっと気に病んでしまっただろう。
何か、彼の目を逸らすことができるような話題があれば良いのだが。
「ティカ。依頼は、終わりました?」
街に入ると、ちょうど外から戻ったところだったケイムヴォルクと行き合わせる。
「うん。こちらはつつがなく終わった」
「危ないことは、なかったですよね?」
疑わしげな視線を向けられる。
危ういことといえば、死霊に首に手をかけられたくらいだ。
「平気だ。弁当の、配達をしてきた」
なんと伝えるべきか迷った末に、ティカは彼に嘘をついた。
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