望月 鏡翠
2021-10-21 23:15:57
893文字
Public 日課
 

#423 佇む女

FF14創作/#毎日最低800文字のSSを書く

 ティカ・ア・ジャロウはまず、女性が働いていた弁当屋を探すところからはじめることにした。グリダニアで配達をしていたという弁当屋。情報は少ないが一件一件回り、働いていた女性の外見情報と合わせれば見つけられないことはない。
 聞き込みのため、ケイムヴォルクとは別行動をとることにした。
「依頼なら、手伝いましょうか?」
「いや、明日は私一人でいい」
「ティカ、おれの時間をとることになるとか、考えてます?」
 普段ならば、そうだ。ティカが一人で依頼をこなそうと考えるのは大抵が、ケイムヴォルクの負担になりたくないときだ。だが今回に限っては別の事情があった。
「ケイムには向いていない依頼なんだ。危ないことにはならないから、私に任せてくれ」
「おれ向きじゃない……?」
 ケイムヴォルクは疑るような目をした。
 テーブルの上にあった手に手のひらを重ね、ティカもその目をじっと見つめ返す。これに関しては確信も証拠もなく勘でしかないから、信じてもらうより他ない。
「わかりました。嘘じゃないですよね?」
「うん。本当に本当だ」
 渋々ながら納得してもらい、翌日街に出た。己の勘を確かめるため、依頼人の心当たりの男だけでなく、彼女自身の素性も調べておきたかったのだ。弁当を届けてもらっていたはずの園芸士や鬼哭隊から聞き出した店に向かう。店の人間もそして客たちも、店先に立っていた女性のことを覚えている。
 彼らの怪訝そうな顔と証言は、ティカの推測を裏付けるものだった。
 必要な調査をおえると依頼人を探しにエーテライト広場に向かう。
 あの女性は昨日と同じ場所に佇んでいたが、今日は誰に声をかけるでもなくただただそこにいるだけだ。
「ひとつ、確認したいことがある」
「それにさえ答えれば、あの男の素性を教えてくださいます?」
「うん」
「そういうことなら、仕方がありませんね。何を知りたいんですか? やはり私の探し物が気になります?」
「それは、察しがついた。だが、君は自分が死んでいるという自覚はあるか?」
 女は土気色の顔を上げた。虚のように落ち窪んだ眼窩が、ティカをじっと見つめている。