ご依頼を、受けていただけるんですね。ありがとうございます。では、私が探している相手について、もっと詳しくお話しなければいけませんね。盗んだ相手が誰なのか、私は知りません。でも全く心あたりがないわけではないのです。
当時、私はお弁当屋さんで働いていました。人当たりがいいので、受付を任されていたんです。意外に思われますか? いえ、良いんです、気を遣っていただかなくて。今の私はお世辞にも、元気でもなければ人当たりがいいとは言えませんものね。とてもではないけれど、店先に立たせて気持ちのいい女ではないでしょう。
それもこれも、あの男のせい……。いえ、今こんなことを言っても仕方がありませんね。
そこに、嫌な目つきをしている男がいたのです。弁当を買う前に、商品ではなく私のことをみてニヤニヤとしていました。なにか困っていることがあるのかと尋ねると俯いてモゴモゴと小さい声で何か早口にいったあと、お弁当を買って逃げるようにお店を出て行くのです。数日に一度は来て、いつも決まって私が声をかけるまで何も買わずにお店の中で待っていました。
気持ちが悪い人だなと思っていました。とはいえ、弁当を買いに来ていたお客の一人ですから、内心でどう思ってるかなんておくびにもだしませんでした。当然、私はその人にも笑顔で接しました。それが悪かったのかも知れません。私から好意があるように思ったのかも。
店長には相談していました。でもこれといって実害があるわけではないんです。店にいる時間が長いだけで、品物をちゃんと買っていく。何かされたのなら相応の対処をしてくれるけれど、何かしてくれるまでは静観する。それがお店の対応でした。
そんなときに事件は起きました。
私の働いているお弁当屋は仕事の一環で、山に出ている園芸士の方や、森を巡回する方、砦に配達をしていました。森の中を通るのに危険があるといけないから、普段は武術の心得があってチョコボに乗れる方にお願いしていました。でもその日はいつも配達をしてくれている方が、風邪を引いてしまって。
仕方がないのでその日は朝一番からお店に入っていて、途中で上がる予定だった私が届けることになりました。その日はまだあの男の姿は見ていなかった。
慣れない森歩きに戸惑いながら、私は配達先に向かいました。妙な視線を感じてずっといやな予感がしていたんです。嫌な予感がした。人気のない場所に迷い込んだとき、後ろから衝撃を感じました。たぶん、殴られたのだと思います。そこから先のことは記憶にありません。気がついたら私は、この場所に戻ってきていた。でも無事ではなかった……。
私はあの男の正体が知りたい。そして取り返さなくてはいけないものがあるんです。だから、お願いします。
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