汚れた灰色の髪に灰色の瞳をした、褐色肌の小柄なミコッテ族の男。長い髪の毛は編み込んでいる。傍には顔に傷があり、左右で目の色が違う黒髪のルガディンの男がよくいるらしい。
特徴を何度も頭の中で反芻する。間違えてはいないはずだ。いや、顔に傷のあるミコッテに白髪のルガディンだったか? 目の色はどちらがどちらだったっけ。もしかしたら銀色と紫の目のルガディンに黒目のミコッテだったかもしれない。もうわけがわからなくなってきた。
それもこれも、件のティカ・ア・ジャロウとかいう冒険者が見つからないせいだ。何でも不夜城亭という酒場にいけば会える。わかりやすい二人組だという言葉を聞いて、冒険者ばかりが集まる馴染みがない店に恐る恐る足を踏み入れたのだ。
しかし、尋ね人らしき姿はどれだけ探しても一向に見つからない。用もなく店内を彷徨くのも気が引けて、申し訳程度にエールとつまみを頼んでみたが、仕事をおわらせないと気持ちよく酔うこともできない。
それらしい人物は一応見つけているのだ。
尋ね人ではない方の男。顔に傷があり、左右の目の色が違う黒髪のルガディンの男。しかしそのそばにミコッテ族の男の姿はみえないのだ。確信が持てず、強面の冒険者たちに声をかけて確認する勇気を持てずにウロウロしている間に酒がまわり、記憶が曖昧になってきた。
そもそも本当に不夜城亭であっていただろうか。不眠亭とか常夜亭とかではなかったか?
「あの、どうしたんですか?」
あまりに同じところを往復していたからか、向こうから声をかけてきてくれた。
「あのティカ・ア・ジャロウという冒険者に渡すものがあって、この辺りにいるらしいんですが、見つけられなくて……」
「ティカなら、ここにいますよ」
ミコッテではなかったか。だが細かいことはこの際どうでもいい。
「あなたがジャロウさんでしたか」
「いえ、あの違くて。ティカ。ティカ? 」
ルガディンの男が膝を揺するようにすると、彼の着ていた長いコートの内側から手が出てきた。ついで尖った耳がぴょこと、顔を覗かせる。ぐ、と服の内側が突っ張るような動きをした。
「ティカ、伸びをするなら外でしてください」
「寒いんだ」
曖昧な記憶ながらそれが探し人であるというのはわかった。汚れたように黒く色の入った灰色の髪を編み込んだ、褐色肌の小柄なミコッテ。酒場でこいつらは一体何をしていたんだ。疑惑の視線を向けられていることなど気づいてもいない様子で、コートの内側から出て来たティカ・ア・ジャロウはくあとあくびを噛み殺した。
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