望月 鏡翠
2021-10-18 16:10:04
997文字
Public 日課
 

#419 探し物をする女

FF14創作/#毎日最低800文字のSSを書く

 その依頼は、グリダニアに佇む一人の女性から受けたものだった。街角に佇み、道ゆく人に声を掛けていたのだが、彼女の声はあまりにか細く細やかなものだから、誰にも気付いてもらえずにおろおろとするばかりだった。
 ティカとてその声が聞こえたわけではなかった。ただおずおずと手を伸ばしてはおろすその人をでかけるときに見かけ、用事を終えて帰ってきたときもそのままの格好でそこに佇んでいたので見かねて声をかけたのだ。
 ようやく話を聞いてくれる人に巡り会えたと、彼女は心の底からほっとした顔を見せた。話が長くなるようなら座ってはなさないかとカーラインカフェに誘ったが、彼女は首を横に振った。なんでも飲食店は店員に注文を聞いてもらえないから苦手なのだという。
 海都や砂漠の喧騒の中ならいざ知らず、あの店主に限ってそんなことはあるだろうか。だが嫌という人間を強いて連れていっても仕方がない。ティカはエーテライト広場のベンチに座って話を聞いた。
 しかしこれだけの往来があって一人として足を止めてくれる人がいなかったというのは、不幸な話である。風が吹いたら吹き飛ばされてしまいそうな、痩せほそり不健康そうな肌の色をした女性だった。パサパサに乾いた髪の毛を、纏めもせずに背中に流している。こんなところに立っているより、自宅でゆっくり休んだ方がいいのではないかと思ったが、それを押しても叶えたい何かが彼女にはあるのだろう。
 ベンチに座った揃えた膝の間をじっとみつめながら、ぽつりぽつりと話し始めた。
「人を探しているのです」
 その声はやはり消えいりそうで、ひどく聞き取りにくかったのでティカは礼を失しない程度に耳を近づけた。
「ある男を探しているのです。その男に、私はとても大切なものを盗まれてしまって、それを取り戻すまではゆっくり眠ることもできないのです」
 眠れていないという言葉に彼女の今の状態以上に説得力を持たせてくれルものはない。
「その男に取られたものを、取り返してくればいいのか?」
「いえ、その男の家の場所がわかればいいんです。いえ、名前がわかるだけでもいいんです」
「つまり君はその盗人の正体がしりたいんだな」
「はい。お願いできますか?」
 受けている依頼の数を頭の中で数える。ケイムヴォルクと約束した数のギリギリだが、はみ出してはいない。ティカ・ア・ジャロウは彼女の頼みを引き受けた。