望月 鏡翠
2021-10-12 17:54:48
939文字
Public 日課
 

#414 騙りを追う影

FF14創作/#毎日最低800文字のSSを書く

 金はなくなったが無事に依頼は完了したらしい。俺はまた大手を振って酒場に入れるようになった。これで店主からの冷やかな視線に怯えなくてもいい。
「あんた本当にモンスターの討伐をやり遂げたんだな」
 酒場の店主は笑いながらエールを差し出した。名前に実績が伴うと人からの視線は優しくなる。依頼をこなすまでは内心で彼に疑われていたのだろうということが、よくわかった。
「あ、当たり前だろう。あの程度、俺は英雄だぞ」
 声が震える。実のところ英雄であるというのを盾にして、結構な金額をツケにしていたから今回の依頼をごまかしていたらまずいことになっていたのかもしれない。
「正直偽物だと思ってたぜ。まあそれでも増え過ぎたモンスターを始末してくれるなら誰でもいいと思ってたから頼んだんだが。疑って悪かった。もっと手強い相手の依頼もあるんだ。やっていかないか」
 店主は嬉々として裏から依頼書を出してきた。その数をみて俺は目を回しそうになる。いくら金があっても足りないじゃないか。
「や、いや、ちょっと待ってくれ。俺も忙しいんだよ。そろそろ次の街に行こうかと思っていたところだ。残念なんだけどな」
「そうなのか。まぁ今はたまたま腕利きが来ているから、そっちに頼むか」
「腕利き?」
 光の戦士に出すような依頼を受けられる冒険者がいるのか。
「ああ、ちょうどきたぞ」
 店主が顎で示す。カウンター席の隣に腰掛けたのは、依頼を肩代わりしてくれたあの二人組の冒険者だったので、俺は心臓が跳ね上がった。頼む余計なことを言わないでくれと祈るような気持ちで、しかし顔を背けるのも不自然なので軽く片手を掲げて挨拶をする。
 二人組の冒険者が口数が少ないタイプであったことに助けられた。ここで、今日お前から任された依頼はなどと話しを振られたら、俺の嘘はすぐにバレる。報酬で彼らに渡してしまったから手持ちはゼロで、ツケをどうにかするお金もない。世話になった相手ではあるが、用が済んだら早く何処かへ旅立ってくれないだろうか。
 気まずい思いをしながらエールを飲んだところで、荒々しく扉が蹴破られた。
「おい、今この酒場に光の戦士とやらがいるってなぁ」
 店中に響き渡る大声で入ってきた男は、武器を携えていた。