小柄なミコッテ族とルガディン族の二人組は、何か大きな荷物を持って歩いていた。広場から離れたこんなところで何をしているのかわからなかったが、都合がいい。見たところあの二人は冒険者だ。戦える人間なのだから、うまいこと俺が光の戦士ではないということを伏せたまま、依頼を肩代わりして貰えばいい。
「なあ、あんた」
声をかけると二人は足を止めた。
「光の戦士か」
表情の読めない小柄なミコッテが俺を見上げる。
俺の言ったことが嘘だと疑っている風ではない。それならば普通はもっと怒りや嫌悪をあらわにするからだ。だが、英雄に向けられるべき尊敬や憧憬や、その他諸々の感情も伺いしれない。
「少し、頼まれちゃくれないか。モンスターの討伐なんだが、俺はちょっと忙しくてな。この程度の依頼なら、冒険者でも問題ない。そうだろ?」
酒場の店主から頼まれていた依頼の内容を伝える。この近辺ではかなり強いモンスターのはずなのだが、ミコッテは深く考えた風もなく頷いた。本当に大丈夫なのか。頼むのは俺だが、これで命を落としたなんていう展開になったら、流石に寝覚が悪い。
「問題ない」
顔色を変えたのはむしろ、保護者のように後ろに立っていたルガディンの方だった。
「ティカ? 駄目ですよ。一度に受けていい依頼は三十個までって約束したじゃないですか」
この冒険者、そんなに依頼を受けていたのか。そんなに金に困っているとは思わなかった。酒の飲み過ぎか、ギャンブル癖があるのだろうか。後ろの男に借金でもしているのかもしれない。それならば、俺が提示した金額は十分なはずだ。
「これを運び終えたら一つ終わるだろう」
「それは、そうですけど……」
どうやら俺が隠れていた建物の裏手に、資材を運んできたところだったらしい。積み上げてあった木箱の上に、持ってきた荷物を重ねた。
「私が受けなかったら、君がモンスターの討伐に行くことになるんだろう」
「あ、ああ。そうだ。いや、これくらい大した手間じゃないんだが、俺はほら忙しいからな。なにしろ……」
納得のできる理由を言おうとしたが、彼はそれを聞いていないようだった。後ろにいるルガディンと話し込んでいる。無視をされたことにはムッとしたが、討伐を肩代わりしてもらえるのだから贅沢は言えなかった。
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.