気づいたのは偶然だった。差し向かいでお茶を飲み、会話が途切れたとき、ゆっくりとこちらに伸ばされた手が頬に触れた。あれ、と普賢は目をみはる。わずかに戸惑いながら見上げると、目の奥の笑みが深まって、ますます困惑した。
問いただす間もなく抱きすくめられ、長椅子に横たえられる。組み敷かれる体をよじって胸を押し返すと、耳元で「どうした」と囁きが落とされた。違和感は疑惑に変わる。
「こんな場所で、こんな時間に、玉鼎はこんなことしない。……楊戩?」
彼は一瞬きょとんとし、それからくつくつと笑った。
「いつもと違うと。……困ったな」
本当に困ったという口調だった。
「いつもは正しく時間と手順を守っていると、そう言いたいのだろうが」
それもそうだけれど、もっと、何かが根本的に、決定的にちがう。なにかうまく言えないけれど……そう、こんなにも手馴れたあしらいをする玉鼎を、普賢は知らない。
「考えすぎだ」と彼はまた笑った。
「たまにはこういうのもいいと思っただけだ」
その手がするりと背をなぞる。粟立つ肌に、首筋に直接指を這わせながら、愉快そうに彼は頬を寄せた。
「まあ、どちらでもいい。たいして変わりはしない」
なにもわからないまま、再び横たえられる。いつもとちがう場所で、時間で、いつもとちがうその人に、普賢は抱かれた。
了
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