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ポーカーフェイス

聞普事後メシ。調子に乗ってすみません。料理上手な人。

薬膳粥。野菜の小鉢。具沢山の汁物に、色とりどりの季節の果実。決して広くはない食卓に、所狭しと並んだ料理の数々に、普賢は目を丸くした。
……あの、」
「座れ。粥が冷める」
呆然としたまま、はい、と頷いて席についた。目の前の人は黙々と鍋から粥をよそい、普賢に差し出す。両手で受け取って、ちらりとその顔を見た。
いつもの無表情だ。なにを考えているのか、怒っているのか、機嫌が悪いのかすらわからない。自分の椀にも粥を注いで、おもむろに黙々と口に運びはじめた。普賢も「いただきます」と呟いてから、匙で一口掬った。
しみわたるようなおいしさだった。米はほどよく柔らかく、それでいて風味が損なわれていない。汁物も、どの小鉢も、これまで食べたものの中で一番かと思うほど。
「おいしい……
ふとそう漏らすと、その人が口の端でふと笑んだのがわかった。
「あの、これはどこから」
「私が作った」
「あなたが?」
驚いて手を止める。
「大したことではない」
「でも」
それきり、彼は普賢には見向きもせず、粥を平らげていく。青菜を箸でつまみながら、普賢は困惑する。いったいいつ。眠ったのはずいぶん遅かったはず。そして今は、そんなに遅い朝ではない。確かに自分のほうが遅く起きてきたとはいえ、こんなに品数を作る時間がどこにあったんだろう。
美しく煮られた芋を取ろうと、箸を伸ばしたその人の横顔を見たとき、ふと普賢はあることに気付いて「あ!」と声を上げた。
……なんだ」
「いえ、その」
じろりと睨まれて慌てて目を逸らす。
「言ってみろ」
まちがいでなければ、というか、絶対合ってる。でも、言っても言わなくてもきっと気を悪くする。でも、それでも……
「聞仲……一睡もしていないでしょう?」

がちゃんと音を立てて、目の前で箸が置かれた。ああ、やっぱり……。ちょびっと目の下に隈ができていたように見えたんだけど。
身を竦め、目を合わせられないまま気まずい沈黙が過ぎていく。大きなため息がつくのが聞こえた。
「食べきれないなら残しておけ。それから片づけはしなくていい」
え、と普賢が顔を上げるより一瞬だけ早く、その人は席を立った。横顔がわずかに赤らんでいるように見えたが、今度こそそのことは黙っていようと、普賢は思った。